神保氏は、自衛隊のイラク派遣を支持する国民が不支持を上回るにも関わらず、派遣に関する政府の説明に満足していない人たちが圧倒的多数を占めている点に注目し、国民は今、あらためて、安全保障の論理という観点から、イラク派遣に対する説明を求めていると指摘する。そして、この説明は、「空間横断の安全保障」の出現として表現できるのではないかと提案し、「グローバル」「地域(リージョナル)」「国家(ナショナル)」の三つの空間軸の変化がその背景にあるとする。グローバルな対応として、日本は、90年代にはいってから、国際平和協力業務への参加を積極的に行って来た。リージョナルな視点からは、「周辺事態」への対応を、整備してきた。またナショナルの軸からは、有事法制の議論が行われてきた。そして今、これらの三つの軸が互いを侵食しつつ空間全体が変質しつつある。テロが世界の何処を襲うのか分からないという脅威、朝鮮半島の核開発が世界に拡散する危険、これらは何れも、日本の安全を、国という単位や地域という範囲では捉えきれなくなったこと、即ち、遠い場所での出来事と日常の人々の安全が直結する事態が発生していることを示している。この観点に基づくあらたな「空間横断の安全保障」に基づき、日本はイランに自衛隊を派遣した、と認識できるのではないか、と神保氏は主張する。
英語の原文: "Why is Japan sending SDF troops to Iraq?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040412_jimbo_why/