国際経済・通貨分野で世界が認める第一人者である行天氏が、東アジアにおける経済・金融協調の現状について例を挙げて俯瞰した上で、欧州連合(EU)の経験を分析しつつ、東アジア地域での経済統合は、少なくとも欧州型を基準にするのは現実的ではない、と指摘する。
1997年の経済通過危機後、経済通貨分野で協調体制が大きく進展しているが、この動機には、自らの経済力の強化及び米州・EUへの対抗意識がある。具体的には、自由貿易制度の進捗、二国間通貨スワップ協定の拡大、市場監視体制の強化、アジア債券市場の萌芽などが挙げられる。
一方、EUや米州の例と東アジアの状態を比較すると、EUの場合各構成国が比較的同質であり、米州では逆に米国という巨人を筆頭に序列を成していたのに対し、東アジアの場合、構成国の間で様々な要素が入り組んで居り、米欧何れの例も必ずしも参考にはならない。喧伝される日中の指導権争いについては、競合より協調の方が有利であることに両国とも気が付いたようではあるが、そもそも、地域統合に向けての情熱が東アジア全体に同じように浸透していない。
以上から、東アジアの統合というものを、例えばEUと同様に捉えるならば、これは現状では見通しが立たないと言わざるを得ない。しかし、それを逆手にとれば、東アジア独自の、柔軟で強靭な経済「統合」の形も展望できるのではないか。
英語の原文: "Asian Regional Integrations: Its Potential, Its Limits, and Lessons Learned from Europe"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040430_gyohten_asian/