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注目記事 (2004/5/10)

Opinions:
 
「小泉政権の構造改革は着実に進んでいる」
牛尾治朗 (ウシオ電機会長、経済財政諮問会議民間議員)
  
   牛尾氏は、小泉改革を大筋としては高く評価し、小泉首相はこの二年間、わかりやすい言葉で構造改革の必要性と方向を明示し、実行して、それなりに成功してきたという。例えば、財政改革が進み、構造改革を通じた経済活性化もなされつつある。さらに日米同盟と国際協調を基本とした外交、安全保障政策もうまく舵取りしている。しかし、繁栄の利益の分配という長年のしきたりを急に変えることは困難で、その結果改革派の国民や海外の目には改革が遅すぎるようにみえている。したがって、小泉首相は、構造改革をより有効に進めるような体制と決意を対外的に示す必要がある。その最初が現在進行している年金改革である。ただし、小さな効率的政府をつくり、民間主導で経済を活性化させるという路線のなかで、社会保障だけは小さな政府にする方向性を小泉政権は示せていないと、牛尾氏は感じている。
   長期的な改革の見通しについては、そこかしこで変化がおこっており、日本の産業社会も急速に変わりつつある。例えば、雇用形態が多様化しており、会社が有期契約社員や派遣社員などをほぼ自由に使えるようになった。また雇われるほうも、選択肢が増えて歓迎している。また、大学も変わりつつある。国立大学が独立行政法人となり、職員は非公務員となる。外部評価によって予算も変わる。日本の戦後教育におけるもっとも大きな変革といえる。日本経済も着実に良くなってきており、国際競争力を取り戻しつつある。そのような競争力のあるグローバルな企業が今後とも伸び続けていくが、そのとき必要なのは、法人税や所得税を減税して成長を加速させることである。一方、消費税率を引き上げて十分な税収を確保する。ただし、それは小泉首相が任期を満了し、小泉改革が完了するまで待ってからだろうと、牛尾氏は述べている。
英語の原文: "Koizumi Reform is Making Steady Progress"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040510_ushio_koizumi/
 
Debates:
 
「東南アジア諸国で台頭する中国のソフトパワー」 
Eric Teo Chu Cheow (シンガポール国際問題研究所(SIIA)事務総長)
  
   Teo氏は、中国とASEAN諸国の関係強化が急速に進んでいるが、その中で見逃せないのが、中国の「ソフトパワー」が大きな影響力を持ちつつあると指摘する。
   歴史的には、共産主義と実際の侵略という二つの脅威を近隣地域諸国にもたらしていた中国の姿勢は、近年、政治的には各国の体制の尊重を通じた安定、経済的にはFTA協議に象徴される自国経済発展の機会としての近隣諸国、という形に変化してきた。そして更に最近では、中国の文化・料理・書法・映画・骨董品・美術・鍼治療・漢方薬等々が東南アジア各国で流行し初めている。若者の間で流行っている映画・音楽・テレビ番組の中には、厳密には中国発ではない、香港や台湾のものも多く含まれているが、広い意味で中国に親しむために大きな役割を果たしている。特に見逃せないのが、従来、共産主義に反発して北京に背を向けていた、東南アジアに住む中国系・華僑の人たちが、中国に眼を向け始めたことである。
英語の原文: "China's Rising Soft Power in Southeast Asia"
http://www.glocom.org/debates/20040506_cheow_china/
 
Debates:
 
「アジア通貨協調切り上げの勧め」
リチャード・クー (野村総合研究所主席研究員)
  
   クー氏は、世界経済の健全化のためには、アジアの通貨当局は、互いに疑心暗鬼に陥ることなく、歩調を合わせて各国の通貨切り上げ調整を行うべきであると主張する。
   米国の巨大な貿易赤字に対応し、欧州では対ドルのユーロ相場が高騰するのを放任、どころか一部助長する動きをとり、当面の輸出には不利であっても、世界経済の安定を志向した。ユーロがこのような動きをとることが出来たのは、単一通貨により、いわば各国が一斉に調整を行い、従って、地域内相互の関係を中立に保てる体制があったからである。しかしアジアでは、日・中・台とも大きな貿易黒字を記録しながら、巨額の為替介入を行い、世界経済の不均衡を寧ろ助長する政策を採ってきた。アジアの場合、一国だけが調整を行うと、近隣国に比べ不利になってしまうことから、なかなか踏み切ることができなかったからである。しかし、欧州の例に倣えば、各国が積極的に協調して対ドル相場を調整する方が、世界経済、ひいてはアジア自身そして米国経済のためにもなる。
英語の原文: "Concerted approach advisable to revalue Asian currencies"
http://www.glocom.org/debates/20040430_koo_concerted/
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