牛尾氏は、小泉改革を大筋としては高く評価し、小泉首相はこの二年間、わかりやすい言葉で構造改革の必要性と方向を明示し、実行して、それなりに成功してきたという。例えば、財政改革が進み、構造改革を通じた経済活性化もなされつつある。さらに日米同盟と国際協調を基本とした外交、安全保障政策もうまく舵取りしている。しかし、繁栄の利益の分配という長年のしきたりを急に変えることは困難で、その結果改革派の国民や海外の目には改革が遅すぎるようにみえている。したがって、小泉首相は、構造改革をより有効に進めるような体制と決意を対外的に示す必要がある。その最初が現在進行している年金改革である。ただし、小さな効率的政府をつくり、民間主導で経済を活性化させるという路線のなかで、社会保障だけは小さな政府にする方向性を小泉政権は示せていないと、牛尾氏は感じている。
長期的な改革の見通しについては、そこかしこで変化がおこっており、日本の産業社会も急速に変わりつつある。例えば、雇用形態が多様化しており、会社が有期契約社員や派遣社員などをほぼ自由に使えるようになった。また雇われるほうも、選択肢が増えて歓迎している。また、大学も変わりつつある。国立大学が独立行政法人となり、職員は非公務員となる。外部評価によって予算も変わる。日本の戦後教育におけるもっとも大きな変革といえる。日本経済も着実に良くなってきており、国際競争力を取り戻しつつある。そのような競争力のあるグローバルな企業が今後とも伸び続けていくが、そのとき必要なのは、法人税や所得税を減税して成長を加速させることである。一方、消費税率を引き上げて十分な税収を確保する。ただし、それは小泉首相が任期を満了し、小泉改革が完了するまで待ってからだろうと、牛尾氏は述べている。
英語の原文: "Koizumi Reform is Making Steady Progress"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040510_ushio_koizumi/