山澤氏は、まず2004年5月1日にEUが25カ国に拡大したことに言及し、東アジアでも同様の共同体ができるかどうかを問うている。東アジアの現状は、市場先行で域内の貿易や投資の緊密化が日・韓・ASEANの間で進んできたが、特に1990年後半の通貨危機を契機に地域統合の動きが顕著になり、最近この動きに中国も加わって、多くのFTA構想が出てきている。日本もシンガポール、韓国、ASEAN諸国などとのFTAを進めつつあるが、この面では中国に遅れをとっているといえる。ただし対ASEANではこれまでの実績をもとに、統合されたASEANとの包括的な経済提携を進めることで大きな経済的メリットが期待できる。
今後の東アジア経済共同体への展望としては、経済合理性からいえば東アジア全域をカバーする経済圏の形成がベストであるが、日・中・韓の間の相互不信といった非経済的要因でその進展が阻まれている。したがって、当面はそれぞれのニーズに対応して可能なところから実現していく以外にない。さらに経済統合によって一つの経済システムを共有することになるが、アジアではそれが必ずしも英米基準になるとは限らず、ある意味では諸国間の差を許容する多様性を備えた独自の経済システムを形勢することが望ましい。ただし、あくまでグローバルな競争に生き残る効率性を有することが必要条件であると山澤氏は述べている。
英語の原文: "East Asian Community and Japan's Strategy"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040517_yamazawa_east/