岩田氏は、景気が順調に回復する中、金融政策において、現行の量的緩和からの「出口政策」が重要であると主張する。
日銀は、現状の量的緩和政策を解除する条件として、概ね、消費者物価上昇率がマイナスに振れる危険が去ったとき、という趣旨の説明をしているが、これでは、現政策解除後にどのような金融政策が何を目標として運営されるのかの予想がつかない点で不安定である。
これに対し、一部の日銀審議委員は、出口政策として「インフレ参照値」を提唱している。しかし、参照値というのは、当局が好ましいと思う数字の表明ではあるが、政策との関係が曖昧である以上、これでは金融政策自体が明らかになったとは言えない。
政策の表明として重要なのは、日銀自らが「インフレターゲット」を公表すること、即ちインフレ率の目標値を公表し、これの実現を図ることを目的として金融政策を運営する、というコミットメントである。また、タイミングについては、量的緩和解除後に急に政策の枠組みを変えることは好ましくないことから、日銀は、今から「インフレターゲット」を公表し、その達成にコミットすべきである。
英語の原文: "Inflation Target Needed, Not a Reference Rate"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20040802_iwata_inflation/