グロッサーマン氏は、良好な日中関係は、両国のみならず、地域の平和・安定・繁栄のために必須であるにも関わらず、最近の兆候を踏まえ、両国関係の先行きに深い懸念を示す。
日中関係は、良好に見える面もある。両国政府高官は、様々な場で頻繁に意見交換を行っており、相互の旅行者や留学生は大きな数に上っている。経済関係の緊密さは言うまでも無い。しかしその反面、首脳の相手国への公式訪問は無く、中国人の3割は日中関係は「悪い」と認識し、そして、中国経済の日本に対する依存度は低下している。
サッカーアジアカップの際の騒乱を実際に見たが、日本に対する憎悪は明白であった。珠海での出張者による破廉恥騒ぎ、西安での留学生の寸劇、瀋陽での脱北者による日本総領事館駆け込み、福岡での中国人による一家四人惨殺事件、等、互いの非を責め、憎悪を増幅する材料には事欠かない。外国では、このような確執は両国が将来に向けて競争関係にあるからとする意見がある。しかし真の原因は、将来では無く過去にあり、しかも問題は時間の経過とともに薄らぐのではなくむしろ増幅している。
中国人の内政への不満の捌け口として日本が対象となっているという面もある。中国では、台湾の選挙、米国の一国主義、そして日本の傲慢さに抗議することは認められているが、自らの政府に抗議することは出来ない。しかし当初は捌け口であっても、実際の行動を通じて反日感情が醸成・増幅されることは有り得る。中国政府は、日本バッシングによって愛国心を奮い立たせるという手法が両刃の剣であることを認識している。だから中国政府はアジアカップ後の抗議デモを矮小化して見せようとした。しかし教科書、新聞、そして政府発表等に常に充満している反日感情を受け、対日抗議行動は燃え上がった。
日中関係の改善は難しいように見える。しかし、そうだとすればもっとも有効な政策は、両国が互いに相互依存関係を更に著しく深めることであろう。両国の関係が強くなればなるほど、罵りあったり、相手の不利益になる行動をとる余地が減るからである。
英語の原文: "Troubling Signs for Japan-China Relations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20040906_gloss_troubling/