日本が経験したバブル経済については、既に数多の検証が行われているが、行天氏は、今回、なぜ・どうしてバブルが発生したのかについて改めて考察を行う。
バブル発生の直接の原因が経済への急速な流動性の注入にあることは明らかであるが、なぜそうなったか。今からみれば非常識かも知れないが、80年代後半には、経済成長により不動産価格が上昇することは当然と思われていた。また、日銀は、不動産価格の上昇が一般物価上昇とは異なるとの考えから、自らに関わる問題という認識が乏しかった。しかし89年には本格的な物価上昇が始まり、危機意識をもった日銀は公定歩合の急速な引上げを行い、政府側も不動産向け融資規制を発動、バブルは破裂した。
その後の様々な分析から色々な教訓が得られた中で、バブル発生を防げなかった重要な理由が四つあげられる。円高・日米貿易不均衡・財政赤字等、経済の諸分野に表れていた危険の兆候を正しく評価できなかったこと。構造改革を推進すべきであったにもかかわらず、円高対策に躍起となるという、経済政策としての目標設定を誤ったこと。国内需要喚起政策として、財政の出動がないまま、金融緩和に偏りすぎたという形で、政策の手段を間違えたこと。そしてようやく金融引き締めが実施されたのは遅きに失した89年、しかもその遅延を取り戻すかのように、急激・大幅の引き締めを行うという、いわば政策実施のタイミングを間違えたことである。
そして、なぜこのように幾重にも間違えを重ねたのかに答えるためには、日本の政策決定構造にも触れなければならない。非力な日銀、傲慢な財政当局、既得権保持に跋扈する政治家、そして指導力を発揮せずに理念無き妥協を図るばかりの政府、更には、信念や先見性に乏しいまま大衆迎合と日和見主義に脱したメディアも一角を担った。
英語の原文: "Asset Price Bubbles - What Have We Learned?"
http://www/opinions/essays/20040921_gyohten_asset/