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注目記事 (2004/11/8)

Opinions:
 
「変革の熱意に乏しい旧国立大学」
 佐和隆光 (京都大学教授)
  
   国立大学の独立行政法人化から半年を経たにも関わらず、改革の兆しが殆ど見えない、と佐和氏は述べる。
   例えば、各学部の教授の数の割当が廃止されたことによりかなり自由になった学部間の教員の移動は実際には殆ど見られない。また、国立大学の収入の57%は文部科学省からの補助に頼っているにも関わらず、効率化の施策は採られていない。
   確かに、一般企業のように人員削減によって経費を縮小することは大学ではより困難である。しかし今後の競争に耐えるには、事務方の効率化を徹底して前線の人員、即ち教員の数を増やさなければならない。しかし、国立大学は夫々事務本部と各学部という二重構造で成り立って居るため、数多くの事務職員を雇っている。
   現在の体制を打破するには大きな力が必要だが、それを有する各大学の理事会は自らの権限を行使する気は無いように見える。そうだとすると、十年後にも何も変わっていないかも知れない。
英語の原文: "Universities Lack Will to Reform"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20041108_sawa_universities/
Debates:
 
「『専業主婦』は近代の産物」
 原田泰 (大和総合研究所チーフエコノミスト)
  
   少子高齢化の中で女性の労働参加を語るとき、専業主婦という日本の社会的慣行が阻害要因であるという意見があるが、原田氏は、専業主婦という形態は日本の伝統では無いと指摘する。
   百年前の日本では殆どが農家であったが、農家に専業主婦などは無く、子育てと家事を行いながら農作業にも携わらなければ食べて行くことは出来なかった。20世紀になって始まった工業化でもはじめは女性労働力の需要が多かった。しかし1920年代以降、重工業化が進むに連れ、男性が働くことにより、家族を養うに充分な収入を得ることが出来るようになり、主婦は外に働きに出る必要は無くなった。更に1950-60年代の高度成長期を経て、専業主婦がむしろ標準と見なされるようになった。これはまた、既に豊かな米国の生活を真似たものでもあった。
   このように、専業主婦というのは経済の変化よって生まれた。であれば、今後も経済的変化に応じて、女性が積極的に働きはじめることは充分期待できる。
英語の原文: "Full-time Housewife: A Modern Invention"
http://www.glocom.org/debates/20041104_harada_full/
Debates:
 
「住基カードの普及について」
 鈴木祥弘 (国際社会経済研究所副理事長)
  
   鈴木氏は、住基カードの普及を進めるには利便性を高めることが必要であると主張する。
   1999年8月、鳴物入りで導入された住基カードは、350万件の計画に対し、25万枚の発行に留まっているという。これは、カードが実際上は住民票の発行のみにしか使えないこと等、利便性が乏しいことが理由である。
   一方、韓国は、1997年の経済危機をITにより乗り切って以降、最近になってからは、地下鉄の駅などに統合キオスクを設置し、住民票の発行のみならず、不動産取引証明書や納税証明書などの発行を、指紋を使った本人確認で行っているという。
   IT国家を掲げて多額の金をかけて構築した住基ネットではあるが、現状をみると、アジアのIT市場は韓国に制覇されるのではないかと危惧される。
英語の原文: "Toward Wider Circulation of Japan's Resident Registry Cards"
http://www.glocom.org/debates/20041108_suzuki_toward/
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