現在政府が検討している郵政事業の四社分離案について、池尾氏は、却って効率化を阻害するものであるとして批判している。
道具や設備といったものは、自分の所有物であれば大切に扱うが、借りたものはぞんざいに扱うという傾向は否めず、また、実際にも、リースやレンタルに適した物件とそうでない物件がある。経済学で、残余コントロール権と呼ぶ、所有物に関する権利の所在は、人々の行動のありように大きく影響する。
国鉄民営化の際に、当初、新幹線保有機構という組織が作られたが、短時日で廃止された経緯がある。これは、特に新幹線のような高度化した列車と線路は一体して設計する必要があることに気が付いたからである。
郵政事業改革で提案されている、三つの事業会社と窓口会社という上下分離の構成は、事業会社それぞれ異なるニーズを、これも独自の意思をもった窓口会社で賄うという趣旨であり、相互の確執と調整にばかり時間が掛かってしまうことが必至であり、効率化は到底覚束ない。「上下分離」は観念論に過ぎない。
英語の原文: "Could the Proposed Two-tier Structure for Postal Reform Promote Efficiency?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20041115_ikeo_could/