I. マクロ経済運営の盲点
これまで国債は活発な公共投資の下でのみ増加するというのが一般的な通念であったが、日本の長期不況の中では、低成長とデフレが税収や法人税を強く押し下げたために、その穴埋めとして却って国債発行残高をつり上げるという反対の帰結を伴った。これまで日銀はインフレ・ターゲットという行き方を嫌ってきた感があるが、マイルドなインフレを実現してのみ、財政の自然増収を実現し、過大な国債の重圧から日本経済を解放できるという発想が、現在のマクロ経済運営の中では完全に盲点になっている。
II. 国債の大量発行
日本の国債発行高は2003年度末には、556兆円となり、国債残高/GDP比率は実に111%となっている。しかし、そのため国債価格が暴落し、金利の急上昇が生じたかといえば、そうではない。そうならない理由は、発行された国債が中央銀行や多少とも政府の息のかかった機関に大量に保有されており、非市場性の部分が多いためであろう。さらに日本の国債の海外による引受率はいちじるしく低い。この日本の姿は国際的にみると、たしかに正常ではないが、国債価格の暴落に対処するうえに、重要な役割を演じているといえる。
III. 郵貯の民営化
郵貯の民営化は長期的には正しい措置であるかもしれないが、その民営化がもし国債消化に対して中期的に逆効果を伴うならば、問題である。民営化のために、郵貯・簡保を通じる国債消化が大きくダウンするならば、それを避けねばならない。仮に郵貯その他政府関連による国債保有が低くなる場合には、コンソル公債のような永久公債発行の措置は重要な役割を演じよう。現在は国債の借換分に対して金利は払うが、元本は償還しない永久国債発行の措置を構想すべき時期ではないだろうか。
英語の原文: "Recent Problems in Macroeconomic Policy"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20041122_shinohara_recent/