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注目記事 (2004/12/13)

Opinions:
 
「デジタル・デバイド解消のための国際支援を」
 鈴木祥弘 (NEC総研理事長)
  
   各国の間での、そして途上国内での所謂デジタル・デバイドの問題については、2000年の九州・沖縄G8サミットで採り上げられ、2002年のカナナスキスサミットでその解消へ向けての提案の最終報告が行われることになっていた。しかし、結局その場ではまとめきれず、国連にバトン・タッチされたが、その後は雲散霧消してしまった。また、ITUが中心となって2003年12月スイスで世界情報サミットが開催され、ここでもデジタル・デバイド解消のための行動計画が採択宣言されているが、実効的施策には結びついていない。
   このように、この問題は、認識はされつつも国際的協調にはこれまで成功していない。そして日本もこの問題に積極的に関わる意思は表明しているものの、日本のODAの仕組みがこのようなテーマを採り上げるに適していない等、実務的な理由もあり、あまり機能していない。
   途上国をも巻き込んだデジタル・デバイド解消策には、技術面でいえば、各国や文化で様々に異なる多様な文字を取り扱うことが可能なIT技術、しかもオペレーティング・システムレベルでの対応が必要である。また、当該国で自主的にインターネット社会をつくる気構えをもった人材の育成が肝要である。
   カナダや韓国では、特別のプログラムを作成して途上国のデジタル・デバイド解消に貢献している。日本でも、各地域特有の特徴に則した政策運営を、政府、企業、大学、NPOなどの総力を上げて行うべきである。特にアジアでは、物量面での交易は欧米を上回るっているものの、情報流通量では欧米間よりもかなり劣っている状況から早く脱却すべきであり、このことがアジア経済圏を確立することにもなる。
英語の原文: "International Support for Dissolving Digital Divide"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20041213_suzuki_international/
Debates:
 
「時代の先端を行くASEAN+3」
 ブラッド・グロッサーマン (CSISパシフィック・フォーラム調査主任)
  
   以前は単に地図の上でのある範囲を意味していたアジアが、ここへ来て急速に地域としての独自のアイデンティティーを明確に示し始め、EUと比肩し得るレベルにまで発展してきている。
   ASEAN+3という協力関係は1997年に始まり、その二年後に制度化された。今では、16の分野にわたる48の協力活動が日常的に機能している。新聞の見出しを飾るような華々しさという観点からは地味な活動が多いが、これらの実務的な協力・協調作業を通じて、より基本的なレベルで各国実務家の信頼関係が大きく培われて来ている。
   この中で大きな役割を演じつつあるのが中国である。中国はASEANを通じ、あるいは個別に各国に働きかけることによって、地域の指導的立場を得ようとしている。特に、ビルマの反民主化政策やタイ南部の暴動への対応など、ASEAN各国でそれぞれ方針が異なる分野を手掛かりに、中国が各国を言わば分割統治しようとするのではないかという懸念も指摘されている。中国に拮抗し得るのは日本であるが、日本は、今後も常に受動的な立場を維持しつつ、指導力を中国とあらそう意図など無いと一般に見なされているし、実際にも、経済の活力は乏しく、ASEANとの経済関係緊密化に関しても及び腰である。可能性としては、日韓そして一部のASEAN加盟国で、建設的な意味での対中国拮抗勢力を設けるのが、地域全体の健全な発展のためにも好ましい。
   その間、域外の国々、特に米国にとっては、従来通りのアジア各国との関係に加え、ASEAN+3という総体を、一個の対応を要する相手として認識する、という二層的なアプローチが必要となろう。
英語の原文: "ASEAN Plus Three Leads the Way"
http://www.glocom.org/debates/20041208_gloss_asean/
Debates:
 
「APECサンチアゴ宣言:着実な進展と新たな挑戦」
 ジェーン・スカンデラプ  (CSIS 太平洋フォーラム理事)
  
   一般報道が政治的側面に偏る中で、先月開催されたAPEC首脳会合で採択されたサンチアゴ宣言は、APECの本来の目的である経済に焦点をあてた意義深い文書といえる。
   宣言では大きく三点が採り上げられた。まず、開放的な多角的貿易体制の強化等を謳ったボゴール宣言の実施に向けて各国の決意が確認されたことである。第二は、WTOとの整合性であり、これは、来年12月に香港で開催されるWTO首脳会議を展望すれば、アジア・太平洋諸国がWTO協議の場でリーダーシップをとって行くための一歩であるといえる。そして、三番目は「ベスト・プラクティス原則」の確認である。これは、既に40件に及ぶと言われるAPEC諸国相互の二国間FTAが、それぞれの規則の違いから企業活動を却って混乱させて居るとの批判に応える形で、実務的努力で「最も効果的、効率的な実践の方法」に収斂させようという各国の意思表明である。
   その他、例えば、テロ対策は米国のみに関わることでは無く、円滑な経済活動を促す基本的な要素として確認される等、サンチアゴ宣言は、地域の経済活動基盤改善に向けて着実な一歩を示したといえる。
英語の原文: "The APEC Santiago Declaration: Steady Progress, New Challenges"
http://www.glocom.org/debates/20041207_skanderup_apec/
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