日本経済は昨年になってバブル崩壊後の停滞からやっと抜け出すことができた。昨年後半には回復の勢いが弱まったが、これは、主として一時的要因に拠るものであり、悲観的になる必要はない。ただし日本経済がバブル崩壊の後遺症を完全に脱して再び黄金時代を迎えるためには内外に多くの難しい課題が山積している。
国外では、円の対ドル相場上昇がある。ドル安の最大の原因は米国の経常収支の赤字であるが、今のような赤字の増大は永続きできず、いずれドルの暴落と米国経済の深刻な停滞を齎すだろうと懸念されている。もしそうなれば、巨額のドル建資産を持ち、米国への輸出に大きく依存している日本経済には大きな打撃となる。米国の赤字を減らす方法は三つ、米国が個人消費や財政赤字を減らすこと、日本を含めた貿易相手国が輸出依存を減らすこと、そしてドル安にして米国の貿易収支を改善することである。しかし、米国の赤字の縮小は米国自身にとってのみならず、貿易相手国にも痛みと負担を強いるものである。従って、米国の赤字縮小はゆっくり行われなければならない。そして日本経済は自らの負担も覚悟して協力しなければならない。
もう一つは中国経済の動向である。日本経済の大事なパートナーになった中国は目下高度成長を続けているが、同時に様々な分野で世界経済に対する大きな波乱要因にもなっている。中国が国際経済体制の中で信頼される一員になることは、中国自身のみならず日本にとっても死活に関する問題であり、日本は政府・民間の両面でこれをサポートして行かねばならない。
国内では、現在の高く安定した生活水準を維持するために、改革は更に徹底して行う必要がある。特定の経済分野への保護や規制を撤廃して各業態、各企業が国際的競争力を具えるよう国内外での競争を推進する、そのためには、強力に改革を進める強い政治の力と、そこで生ずる犠牲に対する暖かい対応の二つが基本となる。
中長期的には、人口減少対策や財政再建といった深刻な課題が待っているが、こういう課題に対しては一貫した長期的政策と同時に着実に一歩一歩を進めるという粘り強さの両方が必要である。
バブル崩壊後の停滞を経て日本は多くの貴重な教訓を学んだ。その成果が少しずつ実り始めた現在必要なのは、世界は日々変化を続けているという事実を充分に認識することと、日本自身も過去のしがらみや経験を絶えず見直して自己改革を進めるという強い意志であろう。
英語の原文: "The Japanese Economy: 2005 and Beyond"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050117_gyohten_japanese/