現在の世界、就中東アジアを方向付ける大きな力が三つある。それらは、米国の卓越・グローバル化の深化、そして国境による制限を受けずに地域に影響を及ぼす国際的勢力である。強力でありかつ至るところで見出されるこれらの力の影響を考慮することが、東アジアを考える場合に肝要である。
1960年代後半から1970年代にかけて、大きな一人あたりGNPと貿易量を背景にした日・豪・米の三国による経済一体化が、言わば最初の三極の実質的同盟関係であった。しかしその際には、日・豪の二カ国は安全保障面では殆ど貢献していなかった。そして2000年以降現在までが、二度目の実質的同盟関係状態にあるが、一度目との大きな違いは、貿易量や経済力を中心にしただけのものではなく、地域の安全保障を視野に入れていることである。
現在の日豪間の実質的同盟関係は四つの要素から成り立っている。両国とも米国主導による安全保障の枠組みに組み入れられていること;両国とも平和維持活動に大きく関わり始めていること;両国とも海上での警備行動への協力を志向していること、そして両国政府とも米国の強い指導力の下にあること、である。
この実質的な同盟関係はまた幾つかの特徴を有する。米国の支配力の下にあること、他のアジア諸国との協力を志向していること、そして国境を越える諸勢力への対応を模索していることである。そしてこれらを含む様々な兆候によって、現在、日本と豪州は同盟関係にあるように見える。
英語の原文: "An Emerging Security Triangle? A Japanese View"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20050124_inoguchi_emerging/