現在開催中の中国の全人代で、台湾独立を阻止するために成立されると言われる「反国家分裂法」については、内容の詳細が分からないうちに騒ぐのは気をつけた方が良い。
今回の「反国家分裂法」は、昨年3月、台湾の陳総統が独立を掲げて再選されたことに危機感を覚えた北京政府が本格的に具体化の検討を始めたものである。その後12月の議会選挙では、台湾の人々はより穏健な路線を求めていることが判明し、その後陳総統も独立の矛先を一応収めた形になっているが、その頃には、北京での「法」制定の動きは既に後戻りできない状況になっていた。
このときを選んで中国がそのような法律(とは言ってもどのようなものであるか実は未だ分からないのだが)を成立させるということは、台湾の陳総統が米国に対し自らが有利になるよう働きかける切っ掛けを与えてしまうという意見がある一方で、新法は従来からの北京政府の主張を文書化しただけで実際的な中身は何も無く、事前の議論は空騒ぎに終わるという見方も出ている。
しかし法の内容がどうあれ、法を成立させる、という行為を行うのは北京政府であり、国際政治の駆け引きの観点からは、今度は「ボールは陳総統の手中にある」ことになる。既に台湾では新法に対抗して新たな国民投票を行う動きも出始めていると聞く。
現状では、米国をはじめとする関係国としては、実際に「反国家分裂法」の内容詳細が明らかになるまで、憶測に基づいたコメントや行動は控えることが、寧ろ地域の安全と安定に寄与する。
英語の原文: "China's Anti-Secession Law: Much Ado About Something?"
http://www.glocom.org/debates/20050304_cossa_china/