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注目記事 (2005/3/28)

Opinions:
 
「企業統治:株主価値の追求が肝要」
 若杉敬明 (東京経済大学教授)
  
    資本主義経済では、企業も私有財産であるが、他方、企業は法人として人格が認められている。従って、法人とは云え、人である株式会社自体には、法的には所有者は存在しない。株主が所有者であるというのは、法制上のことではなく、経済的な実態の認識である。
    このように、会社を所有する株主はガバナンスを有するとともに、そのリスクを負担する。従業員・取引先等を含む株式会社の利害関係者(ステークホルダー)の中で、唯一通常時にリスクを負うのは株主である。
    会社が新商品を開発し、新規事業を始め、そして結果として期待通りの利益を得られれば、株主は株価の上昇を享受できる。即ち、株主価値が創造されたことになる。
    M&Aは、株主のガバナンスが移動することによって、効率の悪い企業を生産性の高い企業に変身させたり、新たに価値のある事業を生み出したりして、国の経済の効率化に貢献する。
    M&Aは日本でも活発になりつつあるが、従来は理解されなかった株主のガバナンスの重要性を人々は理解する必要がある。
英語の原文: "Who is the Owner of a Company? Maximization of Shareholder Value is the Goal"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050328_wakasugi_who/
Debates:
 
「六カ国協議を発展させ地域安全保障の仕組みを」
 ジェームス・グッドビー (ウッドロー・ウィルソン・センター研究員)、
 ドナルド・グロス (ワシントン在住評論家)
  
    北朝鮮の核問題を話し合う六カ国協議は、参加国が、地域の安全保障に協同して対処できるかの試金石である。
    東アジア情勢は不安定さを増している。日本は中国の台頭を牽制するようにロシアとの関係改善を志向し、台湾問題では中国に対立しつつある。韓国には、伝統的な敵対国である日本から遠ざかりつつあり、また米韓同盟も終わらせようという動きがある。他方、米国は、東アジアサミットに招聘されなかったことに象徴されるように、この地域の国際協力関係から外されつつある。
    米国としては、対抗勢力の台頭を防ぎ、多様化する域内外交での地歩を維持するために、六カ国協議から地域の安全保障メカニズムへの衣替えを図るべきである。そして、新たな枠組みでは、軍事問題のみならず、経済・人道も取り扱うべきである。北朝鮮も加わったこのような仕組みこそが、地域の安定と発展に寄与しよう。そのためには、北朝鮮が最初は消極的であっても、残り五カ国が堅固な協調体制を築く必要がある。
英語の原文: "From Six Party Talks to a Regional Security Mechanism"
http://www.glocom.org/debates/20050325_goodby_from/
Debates:
 
「北方領土議論が露呈する日本の欠陥外交」
 グレゴリー・クラーク (国際教養大学副学長)
  
    プーチン大統領は、1956年の合意に基づき、日本が二島返還に応諾するならば、訪日して和平条約交渉を進展させたいと言っているが、日本側は、あくまで四島同時返還を主張している。
    外務省は、四島はサンフランシスコ和平条約に於いて放棄した千島列島には含まれていないと主張しているが、これは、当時のダラス長官の発言や外務省幹部の国会答弁を含むあらゆる資料から、少なくとも、国後・択捉については真実で無いことが判明する。(但し、放棄された国後・択捉の所属が曖昧であったことは確かなようである。)
    日本が四島を主張した背景は、先に刊行された、1956年当時、ソ連との交渉に直接携わった松本俊一氏による「モスクワにかける虹:日ソ国交回復秘録」にも見ることができる。これによると、一旦日ソで合意した二島返還に対し、ダラス国務長官が、日本は四島を主張しなければ米国は沖縄を返還しない、と脅したとある。
    日本の外交が敗戦と冷戦に翻弄された苦渋と経緯には理解できる面もあるが、そろそろ、機密文書を含め、冷静かつ厳密な経緯の分析が行われるべきではないか。
英語の原文: "Northern Territories Dispute Highlights Flawed Diplomacy"
http://www.glocom.org/debates/20050325_clark_northern/
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