団塊の世代が二〇〇七年以降、六十歳の定年年齢を迎え、日本の労働力は大幅に減少する。大量定年退職者の出現は、当人はもとより、社会にも、例えば家計貯蓄率の低下という形で大きな影響を与える。
就業者数減少の影響は、業種や職種、企業規模、地域によって大きく異なる。生産にかかわる技能工は後継者が少なく、多くの企業で再雇用や雇用延長の動きが目立つ一方、ホワイトカラーでは過剰雇用感が続く。また、従来、高齢化は地方圏で顕著だったが、今後は大都市圏でも急速に進展する。
賃金と生産性の間には、労働者が若いうちは生産性以下に賃金が抑えられる一方、高齢者になってから生産性を上回る賃金が支払われるという関係があるといわれる。従って、年齢に代わる客観的基準がないまま定年制が撤廃されると、雇用不安を増幅する恐れがある。高齢者の継続雇用を容易にするには、生産性と賃金のギャップを縮小させなければならない。
近年、多様な働き方を選択できるワークシェアリングを実施したり、定年前から雇用管理に工夫を凝らすことで、個人の強みをいかし、収益を拡大している企業も増えている。年齢や性別にかかわらず、だれもが能力を発揮できるような雇用環境を実現できるかどうか、本格的な人口減少社会の到来を控えた日本にとって団塊世代の定年は重大な試金石となろう。
英語の原文: "Baby-boom Generation Approaches Retirement Age: Coping with a Depopulating Society"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050418_higuchi_baby/