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注目記事 (2005/4/18)

Opinions:
 
「団塊世代に定年年齢迫る - 人口減少社会への試金石」
 樋口美雄 (慶応義塾大学教授)
  

   団塊の世代が二〇〇七年以降、六十歳の定年年齢を迎え、日本の労働力は大幅に減少する。大量定年退職者の出現は、当人はもとより、社会にも、例えば家計貯蓄率の低下という形で大きな影響を与える。
   就業者数減少の影響は、業種や職種、企業規模、地域によって大きく異なる。生産にかかわる技能工は後継者が少なく、多くの企業で再雇用や雇用延長の動きが目立つ一方、ホワイトカラーでは過剰雇用感が続く。また、従来、高齢化は地方圏で顕著だったが、今後は大都市圏でも急速に進展する。
   賃金と生産性の間には、労働者が若いうちは生産性以下に賃金が抑えられる一方、高齢者になってから生産性を上回る賃金が支払われるという関係があるといわれる。従って、年齢に代わる客観的基準がないまま定年制が撤廃されると、雇用不安を増幅する恐れがある。高齢者の継続雇用を容易にするには、生産性と賃金のギャップを縮小させなければならない。
   近年、多様な働き方を選択できるワークシェアリングを実施したり、定年前から雇用管理に工夫を凝らすことで、個人の強みをいかし、収益を拡大している企業も増えている。年齢や性別にかかわらず、だれもが能力を発揮できるような雇用環境を実現できるかどうか、本格的な人口減少社会の到来を控えた日本にとって団塊世代の定年は重大な試金石となろう。

英語の原文: "Baby-boom Generation Approaches Retirement Age: Coping with a Depopulating Society"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050418_higuchi_baby/
Debates:
 
「押し付けられた戦争犯罪からの脱皮」
 グレゴリー・クラーク (国際教養大学副学長)
  

   中国内の日本の外交施設に対する被害を食い止めなかったことに関し、日本政府が中国政府を非難することは正しい。しかし、中国側としては、1989年に天安門前広場で行った群集に対する制圧が世界中から非難されたという悪夢の再来を回避したかったのかも知れない。
   ただし、それはそれとして、日本は、戦前から最近まで一貫して中国に対し行って来た酷い仕打ちを反省する必要がある。しかし、日本国内では最近むしろ、第二次大戦に於ける日本の戦争犯罪への贖罪の要求が、外国から不当かつ過大に主張されているとの反発が強まっている。
   多くの批評家は、第二次大戦終了以降のドイツと日本のこれまでの態度の違いについて述べるが、この見方は間違っている。比較すべきは第一次大戦後のドイツと第二次大戦後の日本である。第一次大戦後、戦勝国がドイツに課した過重の負担は醜悪な結果を呼んだ。ヒトラーの台頭である。

英語の原文: "Shedding Imposed War Guilt"
http://www.glocom.org/debates/20050415_clark_shedding/
Debates:
 
「中国に対する歴史の教訓」
 フィリップ・ボーリング (評論家、香港在住)
  

   中国共産党の幹部達が、日本に向かって過去の落ち度を認めるよう説教することほど、偽善的なことはない。中国政府の暴言・そして政府の後押しを受けた抗議行動は、日本の安保理常任理事国入りを阻止するための下卑た工作である。世界の国々が、自らの歴史の暗い部分に触れたがらないのは、珍しいことではない。特に教科書では、過去を美化し、国の為に斃れた人達を全体として敬うのは世界共通である。
   中国は自らを蹂躙したとしてなぜ英国を非難しないのか。英国には靖国神社こそ無いが、戦いに斃れた人は善悪を問わず祀り、王室も政府高官も詣でている。他の例でも、米国のフィリピン占領、豪州のアボリジニ殺戮、などは、本国の教科書には殆ど採り上げられていない。日本は中国本土では酷いことをしたかも知れないが、アジアの他の国々では違った評価もある。
   中国が歴史を捻じ曲げようとしているのは不幸なことである。中国が日本を非難するのは、安保理で拒否権を有する常任理事国という自らの優越的な立場を保持しようと意図を隠蔽する企てである。中国は、共産党の強硬・主戦的な主張を、自らにとって害となるほど採り入れてしまった。今や、後ろ向きの中国は、未来に掛けるアジア地域の前進を阻んでいる。

英語の原文: "Sino-Japanese Rrelations: Some History Lessons for China"
http://www.glocom.org/debates/20050418_bowring_sino/
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