日本経済が停滞した90年代は、「失われた十年」等と言われることもあるが、その真の原因については未だ定説は無い。停滞の経験は70年代にもあり、このときは成長率が10%から3%まで低下した。これは、90年代の3%から1%への鈍化よりインパクトは大きかったにも関わらず、オイルショックのせいとして、深い原因追求は行われなかった。実は、原油価格の高騰によってはこの沈滞を説明できなかったのである。
まず、オイルショックは確かに世界中に影響を及ぼしたが、日本のみがあのように深刻な停滞に陥ったことである。アジア周辺国も当時経済成長鈍化を経験していない。次に、原油価格の高騰が停滞の理由であるならば、価格が落ち着くと共に経済は回復するはずであるが、90年代に原油の実質価格が70年代の水準に戻ってからも経済回復は見られなかった。そして、原油価格の上昇による影響は増税と同様である筈だが、1981年の経済企画庁報告ではその影響はGDPの3%であると試算された。つまり、原油価格の高騰による成長率への影響は、その時点で一過性のものとして(10-3%として)7%までの落込みに止まり、1975年には元の10%成長に戻るはずであった。
漸く最近になって、70年代の経済停滞の真の原因を追求する動きが現れて来た。例えば、60年代末にかけての行過ぎた金融緩和がインフレを呼び、成長を低下させた。大型店舗法に代表されるような国内の諸制度の硬直化も持続的に成長を押さえ込む要因となった。そして、このような制度の硬直化が、人口の国内移動を阻害したことが、70年代の停滞の主因であると述べている。即ち、地方に対する大規模な公共投資が、本来都市部に移動すべき人々を生産性の低い地方に繋ぎとめた。そして同時に、人々の間に、公共投資依存体質を齎した。
70年代の日本の成長は世界から称賛されたものであったが、実は、過度に規制された経済という現在に至る問題の芽はその頃に作られたのである。
英語の原文: "Stage for Current Growth Decline Set in '70s"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050502_harada_stage/