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注目記事 (2005/5/2)

Opinions:
 
「現在の成長鈍化の芽は70年代に遡る」
 原田 泰 (大和総研チーフエコノミスト)
  

   日本経済が停滞した90年代は、「失われた十年」等と言われることもあるが、その真の原因については未だ定説は無い。停滞の経験は70年代にもあり、このときは成長率が10%から3%まで低下した。これは、90年代の3%から1%への鈍化よりインパクトは大きかったにも関わらず、オイルショックのせいとして、深い原因追求は行われなかった。実は、原油価格の高騰によってはこの沈滞を説明できなかったのである。
   まず、オイルショックは確かに世界中に影響を及ぼしたが、日本のみがあのように深刻な停滞に陥ったことである。アジア周辺国も当時経済成長鈍化を経験していない。次に、原油価格の高騰が停滞の理由であるならば、価格が落ち着くと共に経済は回復するはずであるが、90年代に原油の実質価格が70年代の水準に戻ってからも経済回復は見られなかった。そして、原油価格の上昇による影響は増税と同様である筈だが、1981年の経済企画庁報告ではその影響はGDPの3%であると試算された。つまり、原油価格の高騰による成長率への影響は、その時点で一過性のものとして(10-3%として)7%までの落込みに止まり、1975年には元の10%成長に戻るはずであった。
   漸く最近になって、70年代の経済停滞の真の原因を追求する動きが現れて来た。例えば、60年代末にかけての行過ぎた金融緩和がインフレを呼び、成長を低下させた。大型店舗法に代表されるような国内の諸制度の硬直化も持続的に成長を押さえ込む要因となった。そして、このような制度の硬直化が、人口の国内移動を阻害したことが、70年代の停滞の主因であると述べている。即ち、地方に対する大規模な公共投資が、本来都市部に移動すべき人々を生産性の低い地方に繋ぎとめた。そして同時に、人々の間に、公共投資依存体質を齎した。
   70年代の日本の成長は世界から称賛されたものであったが、実は、過度に規制された経済という現在に至る問題の芽はその頃に作られたのである。

英語の原文: "Stage for Current Growth Decline Set in '70s"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050502_harada_stage/
Debates:
 
「中国は民主化しても反日であり続ける」
 阿久津博康 (NPO法人岡崎研究所主任研究員)
  

   現代の欧米を中心とした国際政治学には、「民主主義国家はお互いに戦争をしない」という命題がある。この考えに従えば、中国が民主化した場合、中国が現在ほど露骨な武力による脅威を台湾に対して示したり、潜水艦を日本近海に徘徊させるようなことはしなくなる、ということになる。
   しかし、いかなる民主主義国家においても、他国に対する戦略的思考、諜報や軍事における警戒心、あるいは少なくとも経済的・文化的競争心が存在する。そもそも民主化は、必ずしも対外ナショナリズムの消失を意味するものではなく、場合によっては、民主化は対外ナショナリズムを強化することも考えられる。中国が民主化したからといって日中関係がすぐに完全な友好関係に入ると考えることは、極めて甘いと言わざるを得ない。
   韓国がよい例である。韓国は今では中進国郡に位置する民主主義国家であるが、反日感情は常に存在し、それが国内の政治勢力の間で頻繁に利用されてきたという長年の歴史がある。現在の中国人の反日ナショナリズムが、天安門事件以降、共産党の保身政策の一環として創造されたことは、欧米の冷静な観察者の間でも歴然たる事実として認知されている。中国が民主化しても中国人の反日ナショナリズムが消えないとすれば、日本はより長期的な視点から中国の反日ナショナリズムとの付き合い方を今から考えておくべきであろう。

英語の原文: "China Would Continue to be Anti-Japanese Even After Democratization"
http://www.glocom.org/debates/20050428_akutsu_china/
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