心ある日本人、中国人は現在の日中関係に言い知れぬ苦渋と悲しみをおぼえているはずだ。今、周恩来のような賢人はどこにいるのか。
自然発生的に始まったとされる反日デモは暴力的となり、日中友好条約締結以来最悪の事態となった。それは日本人が今回の事件についてテレビのニュースを見て、また中国人はインターネットや携帯電話を使って、直接お互いに対話しないために、悪循環が加速された結果でもあった。
今のところ、日本政府が日中両国民に対して冷静な対応を呼びかけ、中国政府は暴力的なデモの参加者に厳しく対応しているため、事態は小康状態を保っている。しかし、日中双方のスタンスには依然として大きな違いがあり、その差はこのところの靖国問題の深刻化とともにさらに大きくなっているようにみえる。
このような事態になって最も厳しい状況に置かれているのが中国に進出している日系企業とその関係者である。中国政府に進出を歓迎するといわれ、中国の法規に従って進出し努力している彼らに罪はないのに、暴力と不買運動のターゲットになっている。中国政府は彼らの生命と財産の保護に万全を期し、またそのような運動が日本と中国の両方にいかに不利益をもたらすかを一般に周知すべきである。
中国にいる日本人だけでなく、日本にいる中国人、特に中国人学生も極めて厳しい状況に置かれている。よりよい日中関係を期待して留学を果した彼らは、今「二つの祖国」の対立の狭間に置かれて、人知れず心を痛めているのだ。
日中両国のリーダーは、歴史に鑑み、あらゆるレベルでの人的交流によって豊かな未来を切り開くという共通の目的をもっているようにみえる。そうであれば、両国のリーダーと国民がまず心がけるべきは、今後両国の架け橋となる若い留学生を保護し、激励することでなければならない。
両国の心ある人々に訴えたい。長い歴史の中で隣国同士不幸で不愉快な事態を耐え忍ばなければならないこともある。しかし、われわれには豊かな未来があるはずだ。とすれば、未来を照らすろうそくの火が細らないようにそれぞれのレベルで最大限の努力をしようではないか。
英語の原文: "Urgent Appeal to Improve Japan-China Relations"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050613_kinoshita_urgent/