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注目記事 (2005/7/11)

Opinions:
 
「迫る人民元改革 ─ 切り上げは中国の利益」
 関志雄 (野村資本市場研究所シニアフェロー)
  
    中国の外貨準備は急速に積み上がっており、そう遠くない将来、日本を抜いて世界一の外貨準備保有国となろう。これは、現在の人民元レートが市場の均衡水準を下回っていることにより、中国の対外不均衡が拡大していることによる。人民元の相場を維持するために、市場介入が行われるが、これは国内の経済建設に活用されることなく、海外に流出してしまう。また、介入によって国内の通貨供給量も増え、景気の過熱に拍車を掛けている。人民元の現行為替制度は行き詰まっている。資本移動が活発化する中で金融政策の独立性を維持するため、中国はドルペッグから管理変動制に移行すべきである。ただ、為替政策はあくまでも経済を安定させる手段であり、「元安」で中国の構造的失業を、また「元高」で米国の構造的貿易赤字を減らすことはできない。人民元の切り上げは、米国のためではなく、中国自身のために必要なのである。

英語の原文: "Reform of China's Foreign Exchange Rate System – A Stronger RMB Benefits China"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050711_kwan_reform/
Debates:
 
「思想的根源の無視」
 佐和隆光 (京都大学教授)
  
    欧米では、経済政策提言は、表面の理論のみならず、どの学派─即ち、どのような思想背景─に拠るかを明確にして行われる。現在の資本主義は19世紀後半とは大きく異なっているが、学界や政界では未だに新古典派とケインズ派が鬩ぎあっている。新古典派は、未だ証明されていない、所得格差が就業意欲を引き起こす、という議論を当然のように主張し、効率性を追求すれば、成果は低所得層にも「したたり落ちる」と主張する。しかし、こうして運営された90年代は更なる富の集中と貧困の増加を齎した。一方、ケインズ派によれば、経済の運営は効率だけではなく、公平性も重要である。近代欧米文明により作られた概念に、「ノブレス・オブリージュ」という、上層階級は恵まれない人を助けなければならないというものがある。私の考えでは、ケインズ経済学は、この「ノブレス・オブリージュ」が集約されたものである。日本は新古典派経済学に拠る政策を志向しているが、これでは「低い生活水準が支える豊かな国」となってしまう。日本も、威厳のある社会を目指す必要がある。

英語の原文: "Denial of a Philosophical Root"
http://www.glocom.org/debates/20050706_sawa_denial/
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