今月28-29日にラオスのビエンチャンで開催されるASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラム(ARF)に、ライス米国務長官が欠席するのは、大変残念なことである。米国務長官がこの会議を欠席するのは初めてでは無いが、これが初めての機会となるライス長官が欠席することにより、アジア各国に失望が広がっている。
ブッシュ政権第一期のパウエル国務長官は四回の機会に全て出席し、本会議のみならず、非公式な各国との接触の機会を有効に利用した。アジア各国は、よき理解者として信頼を寄せていたパウエル氏が去ったことに加え、アーミテージ副長官、ケリー次官補という、アジアを良く知る人たちが政権を去ったことによる米国との関係希薄化を懸念していたところであり、ライス長官の欠席は、アジアの親米筋の懸念を更に増幅させることになった。
ライス長官の欠席を最も喜んでいるのは中国であろう。長官の欠席により、会議における中国の存在感はより大きなものになり、この地域に影響力を強めようとしている中国にとっては絶好の機会となる。ここ数ヶ月の間にも、胡錦濤主席、呉邦国全人代常務委員会委員長、李肇星外交部長等によるアジア歴訪や国際会議出席により、中国はこの地域での存在を積極的に誇示している。
これに対し、米国は、ライス長官が七月に入ってタイを18時間訪問しただけである。また、新任のヒル次官補については、前職の韓国大使の前はポーランド大使だったということもあり、アジアに対する理解に懸念を示す向きもある。
ブッシュ政権第一期には、米国はアジアの多国間協調主義の強力な支持者であった。パウエル前長官のARF皆勤は、ブッシュ大統領のAPEC首脳会議皆勤に呼応するものであった。これに対し、ライス長官の今回の欠席は、米国による国際協調主義から一国主義への政策転換の反映と見る向きも出てきている。ライス長官のARF欠席は、今まさに米国の支持を必要とするアジアの親米派のみならず多国間協調派にとって大きな失望である。
英語の原文: "Condoleezza Rice's 'Unfortunate' Decision"
http://www.glocom.org/debates/20050725_cossa_rice/