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注目記事 (2005/9/12)

Opinions:
 
「環境保全に関する日本の優位性」
 佐和隆光 (京都大学教授)
  
   21世紀が環境の世紀であるというとき、その意味合いには二通りある。ひとつは環境問題の深刻化であり、もうひとつは環境問題こそが経済発展の原動力となる、という視点である。
   既に今世紀に入ってから激しい気象現象が顕著である。大気中の二酸化炭素の増加に拠るとの科学的な証拠は明確では無いが、例えば、記録的な数や規模の台風が日本や米国東部を襲ったり、熱波や旱魃が世界各地で発生している。
   20世紀には電気や原油で動く機械設備が進歩し、経済成長が促された。特に世紀末の20年間はIT産業が大きな役割を担った。既に先進国ではモノが行き渡り、今後の経済成長は、人間の欲望としての健康や長寿、そして世界規模での環境保全に図る過程で実現されることになろう。
   健康と長寿の願いは生命科学の発展を促しているが日本はこの分野での競争力を欠いている。一方環境保全については、例えば日本の自動車産業は世界の最先端に位置している。また日本の電子産業は、省エネ設備開発の分野で大きな能力を持っている。全体として、日本の環境保全技術は世界のトップと言える。日本の産業界は炭素税の導入に激しく反対したが、炭素税の導入は、消費者に省エネ製品への転換を迫ることにより、寧ろ新たな開発を促進させるものである。
   米国を除く先進国は二酸化炭素排出量の削減を合意した。日本の環境技術は自らの経済発展に寄与するだけでなく、世界の環境技術の中心としての役割を担うことが可能である。京都議定書はクリーン開発メカニズムを導入した。この制度では、先進国やその企業は、途上国に対し排出制限技術投資を行うことにより、それに見合う排出権が得られることになっている。この制度は日本の政府と企業に対し、途上国への環境投資を行う動機付けとなる。
   京都議定書で定められた幾つかの対応方法の中では、クリーン開発メカニズムが最も重要な役割を果たすと思われる。そしてこの方法はまた、技術移転を経て、途上国自身が環境対策を実施して行くことを可能にすることにより、世界規模での環境保全に役立つであろう。

英語の原文: "Japan's Green Economic Edge"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050912_sawa_japan/
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