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注目記事 (2005/9/20)

Opinions:
 
「日本の勇敢な一歩 … ただし後ろへ?」
 ブラッド・グロッサーマン (CSISパシフィック・フォーラム調査主任)
  
   自民党のあのような圧勝は誰も予測していなかった。選挙の結果、日本の政治情勢は大きく変化した。しかし不思議なことに、新しい状況は、お馴染みの自民党による一党支配という、昔の日本の姿を想起させる。選挙自体も、政策論争よりは人柄や個性 ─ 今回は特に総理大臣の個性であったが ─ に大きく影響されるという、見方によっては昔と同じような展開となった。
   小泉氏の支持者は、日本が大きな改革に向けての転換点にあると信じている。但し首相の実績については評価が分かれる。小泉氏は、改革を実行するより提案する方に長けているように見える。郵政改革についても、法案が骨抜きにあったという批判に晒されている。
   自民党をぶっ壊すと言って首相の座について小泉氏は、寧ろ民主党をぶっ壊してしまった。民主党が立ち直るかどうかは予断を許さない。この結果、過去数回の選挙を通じ喧伝されて来た、二大政党制への移行は、実現されるにしても更に将来のこととなった。自民党は、従来の民主党支持層である都市住民を奪ってしまった。人柄では無く政策を反映するために導入された小選挙区制は、今回は小泉首相に対する信任投票の道具と化し、誰が「改革者」の名に相応しいかの争いとなってしまった。
   圧勝により小泉氏が党内を治めやすくなったとは必ずしも言えない。もともと党内で反抗者が出たのは、小泉総裁の運営手法にも原因があった。自民党議員の数が増えたと言うことは、その分管理が難しくなったと言うことでもある。そして、多くの議員を管理しつつ政治の透明性を増すというのは困難なことである。
   予想外の選挙結果を踏まえ、各議員は改めて自らの政治的立場を見直す必要がある。そのため、外交案件などは寧ろ先送りされる可能性がある。親米の小泉氏が支持を受けたからと言って、日米関係が更に急速に緊密化するとは限らない。中国をはじめとする周辺諸国も、選挙結果が外交上どのような影響を及ぼすか慎重に吟味する必要がある。
   日本の政治改革が一見逆行したことは、多くの政治アナリストが日本の政治の底流を見誤ったと言うことである。でも問題は、日本の政治家達はそれを理解しているかどうかである。小泉氏が任期を乗り切ったとしても、後継者はどうなるか。巨大な自民党の総裁は、結局最大公約数的な手法で選ぶしか無いのではないか。日本の変化は本質的には僅かなものに留まろう。

英語の原文: "Japan Goes Boldly - Backward?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20050920_gloss_japan/
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