GLOCOM Platform
debates Media Reviews Tech Reviews Special Topics Books & Journals
Newsletters
(Japanese)
Summary Page
(Japanese)
Search with Google
注目記事 (2005/10/24)

Opinions:
 
「小泉首相による公約遂行のための危険な決意」
 ブラッド・グロッサーマン (CSISパシフィック・フォーラム調査主任)
  
   先週、小泉首相は就任以来五回目の靖国参拝を実行した。周辺諸国からは予想された非難表明がなされたが、小泉氏は全く聞く耳を持っていない。
   今年の参拝は、これまでの批判に配慮してか、簡略化された形で実行された。しかしそれで問題が沈静化したわけではない。中国と韓国は、予想された通りの論旨で参拝を激しく非難した。中国は、予定されていた町村外相の訪中を受け入れられないとして中止させた。そして注目すべきは、東南アジア諸国の中にも参拝批判の声が上がってきていることである。
   日本の総理大臣が戦没者の慰霊を行うことや、国民の間に健全な愛国心を育てる努力を費やすことに関しては、全く問題はない。しかし、国内のみを視野に入れた政策を実施することは、アジアの指導的役割を果たそうとする日本にとって、国際的には大きな負担を強いられることになる。いまや日本が軍国化するおそれは無いが、周辺国の心情に無関心であるという態度が、地域の緊張を高める結果となっている。「靖国が日中関係の全てでは無い」と言う首相の発言は正しい、しかし問題の本質とは無関係である。
   日本がアジアで疎外されれば、米国との関係を更に緊密化することになろう。ただしこれは短期的には良い効果を発揮するかも知れないが、長期的には危険も孕む。米国による日本に対する「支持」が、周辺国では「甘やかし」ではないかと言う捉え方をされる可能性は充分存在する。そうすれば、東アジアを不安定にしている元凶は米国であるとの非難さえ起きかねない。だからこそ、米国は今回「関係国の話し合いで問題が解決されることを期待する」という極めて抑制されたコメントに留めた。米国内でも、歴史的経緯より先行きの問題解決を重要視する人たちは、日本を全面的に支持してはいない。米国軍の再編成を巡っての日本の対応を問題視する向きも多い。
   小泉首相は自己主張を充分に行い得た。今後は小泉氏あるいは彼の後継者が、アジア地域での日本の立場をどう構築して行くかが主たる課題となる。

英語の原文: "Koizumi's Dangerous Determination to Keep a Promise"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20051024_gloss_koizumi/
. Top
TOP BACK HOME
Copyright © Japanese Institute of Global Communications