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注目記事 (2005/10/31)

Opinions:
 
「日本の対ASEAN直接投資を維持拡大する方策」
 木下俊彦 (早稲田大学教授)
  
   最初に、直接投資と貿易は両者ともに受入国の経済発展と密接な関係を持っているが、それらの決定要因には大きな違いがあることを指摘したい。最近では、どの国も輸出に加えて海外からの直接投資を増やそうと努力しているが、貿易量は為替レートや要素価格や品質などに依存する一方で、リスク要因については貿易金融や保険制度などがあるために直接投資ほど大きな影響を持たない。そのために貿易量については、少なくとも直近の動きについてはかなり正確に予測できる。
   それに対して海外直接投資は、外国人投資家の複雑な意思決定プロセスに加えて、ホスト国の複雑な規制や許可のシステムにも影響される。投資家はいろいろな種類の直接投資のそれぞれについて最適なホスト国を多くの候補国の中から選ぶ点で、輸出とは異なっている。また投資環境といったものが決定的に重要で、それは政治的安定性、コスト要因、マクロ経済政策、海外投資に対する国民感情、経済的インフラ、税制などに依存する。
   ホスト国のリーダーたちは海外直接投資の論理と決定要因をよく理解して、自国の投資環境を改善するようにリーダーシップをとるべきである。また政府は投資の重要性について国民を「教育」して、海外投資への拒否反応をなくし、投資環境改善のために協力するようにしなければならない。
   ASEAN諸国では、海外からの直接投資を増やすように投資環境を改善するために何をなすべきかの議論が盛んに行われてきた。それに呼応して、日本政府も民間企業もASEAN諸国に協力してきたために、今や多くのASEANのリーダーたちは、そのためになすべきことをよく理解している。例えば、インドネシアの場合は、投資促進法や税制の迅速な整備、適切な労働法の制定、発電所などのインフラ整備などの問題が認識されている。いずれにしても、政府が必要な政策や改革を実施する上での強い政治的意思を持つことが重要である。
   ASEANの政府も国民もすべて、海外直接投資の意思決定プロセスや外国人投資家(例えば日本企業)が直面している問題をよく理解して、将来海外からの直接投資を増やすために投資家のニーズや要求により迅速かつ弾力的に応える必要がある。例えば日本企業でも、東アジアにR&Dセンターを作りたい企業、中国やASEANやインドを結ぶ生産流通ネットワークを持ちたい企業、中国以外に生産拠点を増やしたい企業など様々である。したがって、ASEANの海外直接投資促進戦略は、基礎から上級コースまで多層なものである必要がある。最後に、日本の政府も民間も、ASEANのホスト国のリクエストに応じてどのようなレベルの支援でもできる用意があることを記しておきたい。

英語の原文: "Strategic Recommendation for Sustaining and Expanding Japanese FDI in ASEAN: An Abridged Version"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20051031_kinoshita_strategic/
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