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注目記事 (2005/11/14)

Opinions:
 
「『東アジア文明』が生起しつつあるのか?」
 河東哲夫 (グローコム・フェロー、東京大学客員教授)
  
   東アジアでは反日の動きばかりが関心を呼んでいるが、大都市は中産階級社会化し、その生活様式、住民の意識は似通ったものになりつつある。そこでは、儒教的価値観の上に日本や米国の現代ポップ文化の影響が認められ、新しい「東アジア文明」が生起しつつあるように見える。
   アジアの大都市住民の生活意識を調査した「アジア・バロメーター」(猪口孝、田中明彦他。明石書店)を見ると、東アジアの住民意識にはいくつかの共通点が見られる。即ち日本、韓国、中国、ベトナムにおいては、他のアジア諸国におけるよりも、他人に対する信頼感が高い。信ずる宗教によって、他人への態度を変える度合いも少ない。社会がまとまっているのである。また東アジアの大都市住民は、他のアジアに比べて自分を中流と位置づける度合いが高く、また生活に対する満足度も高い。
   他方、東アジア諸国の間にはあい異なる要素もいくつか見られる。東アジア諸国は他のアジア諸国においては尊敬されている度合いが高いが、不幸なことに互いの間ではそうではない。また、日本人は自分の政府を最も評価していないことが示すように、権威主義や地縁社会からの脱出という点では、日本のみがアジアで突出し過ぎている。また、中国人の6%しか自分をアジアの一員と捉えていない、という「アジア・バロメーター」の調査結果は衝撃的である。
   新しい「東アジア文明」が徐々に醸し出されつつあるのかもしれない。しかし、それにはまだ時間がかかる。東アジア諸国は、歴史をめぐる相互の摩擦を克服しなければならない。さもなければ、周囲につけこまれよう。我々は、政府や地縁・血縁への過度の依存を避け、人間としての尊厳を確保することができ、格差の小さな、まずまずの生活水準を保証してくれる公正な社会を築くべく、力を合わせていかねばならない。

英語の原文: "Is an 'East Asian Civilization' in the Offing?"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20051114_kawato_is/
Debates:
 
「WTO交渉:ジュネーブでの進展は所詮困難」
 マイク・ムーア (前WTO事務局長、元ニュージーランド首相)
  
   ドーハ・ラウンドは、来月に迫った香港閣僚会議の準備会として開催されたジュネーブでの非公式閣僚会合でも捗々しい進展は見られなかった。しかしWTOのような包括的な国際合意が各国夫々内部にも与える影響を考えれば、加盟国間で交渉が行われる一方で、各国内部でのコンセンサスが形成される必要があり、困難は当然である。にもかかわらず、各国指導者がWTOを見限ることなく執拗に交渉を継続している、と言うこと自体が、WTOの重要性に対する認知を表していると言える。ドーハ・ラウンドが成立すれば、世界に3兆ドルの富を増やし、3億人が貧困から救われると言われる。交渉が成功した場合と失敗した場合のシナリオをよく吟味し、各国は当面の利害得失に囚われること無く交渉に臨むべきであろう。

英語の原文: "WTO Talks: Nothing Ever Happens in Geneva"
http://www.glocom.org/debates/20051114_moore_wto/
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