先月、自民党による憲法改正案と、「日米同盟:未来のための変革と再編」報告という、二つの文書が公表された。この二つの書類が同時期に公にされたのは偶然だとしても、更に日米関係の更なる緊密化と憲法改正論議が並行して行われていることは興味深い。
自民党はじめ憲法改正派は、現行憲法が米国の押し付けであったことを論拠の一つにあげてきた。皮肉なことに、その後、特に冷戦時代の米国の政策が、日本に軍事能力を備えた自衛隊を設ける原動力となったのも事実である。
一方、世論調査によれば、多くの人々が、今の世界情勢や日本の安全といった視点からみると、現行憲法は現実から乖離しており、その修正が必要だと述べている。
現行憲法が戦後60年に亘って日本の復興と繁栄に寄与して来たことに異論は無い。問題は、憲法の条文と現実との乖離にある。憲法を歪んだ形で運用するのを止めて、素直に解釈できるものにすることが必要である。例えば、自民党案は、はっきりと日本の自衛権の存在と、それを実効あらしめるための自衛隊の存在を想定している。
ただ、自民党案は、九条関係以外では現行憲法とあまり違いが無い。平和を希求するという現行憲法の理念が踏襲されているのは、国民感情としても当然であるが、問題は、日本とは何か、という定義が無いことである。これまでは日本や日本人という概念は、自明・当然であったが、今後更にグローバル化する世界に於いてそれで充分であろうか。
英語の原文: "Day Dawning for New Constitution"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20051121_ishizuka_day/