日本のブロードバンドの普及は世界のトップである。一方、コンテンツ(情報内容)の面では、日本はテレビの位置づけが非常に高い。テレビ番組が映像の制作量の九二%を占めているが、DVDやインターネットなどで二次利用される割合は八%にすぎない。ネットとテレビの先進国たる日本は、他国に比べ、融合のメリットが大きい。
融合は制度問題でもあるが、それはハード系統よりも、ソフトに深くかかわる。通信と放送の区分は、伝送路の種別ではなく、コンテンツの流通形態によるからである。通信は秘密が侵されてはならず、コンテンツは非規制なのに対し、放送には通信の秘密がなく、コンテンツは規律を受ける。また通信はハード・ソフト分離、放送はハード・ソフト一致を原則としてきたという違いもある。
2002年に施行された電気通信役務利用放送法では、通信網として設置された通信衛星と光ファイバーを、通信と放送のいずれにも弾力的に利用できるようになった。また、放送のハード・ソフトの分離を進展させた。問題は、この法律は、地上放送やBS放送には適用されないこと、そして、著作権法との関係が不明確であることである。今後更に、NHKとNTTの在り方についての検討を含め、問題点を解消して行く必要がある。
だが、そろそろ通信と放送を分ける枠組みを根本的に改めるべきだ。電気通信事業法や放送法といったいわばタテの規律を、無線・有線伝送路法とサービス・コンテンツ法のようなヨコの仕組みに再編するなど、世界に先駆けて「日本型」の法体系を構築すべきである。
英語の原文: "Integration of Communication and Broadcasting: Seek a Japanese Formula to Set a Precedent"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20060220_nakamura_integration/