二月下旬、自民党の二階経済産業相が中国を訪問、温家宝国務院総理、唐家セン国務委員、薄熙来商務相等と会談、また、前後して訪中した中川秀直自民党政調会長が率いる与党訪中団は李長春政治局常務委員等と会談した。しかし「意見交換が行われた」という公式発表に見られる通り、両国関係改善へ向けての実質的な合意は殆ど見出せなかった。
ここで注目すべきは米国の最近の微妙な態度の変化である。従来米国は、日中問題は当事者同士に完全に委ねるという立場であったが、先日ソウルでブッシュ大統領は、日中間の歴史問題の解決を望む、と小泉首相ならびに胡錦濤主席に述べたと伝えられた。米国としては、重要な同盟国の日本がアジア地域でますます孤立化することをおそれて、より積極的な関与を検討しているようだ。
そもそも、日本の歴史認識は米国にとっても無関係ではない。靖国神社側は、戦犯について「連合国側により不当に裁判にかけられた」と主張しているが、言うまでもなく、連合国の筆頭は米国であった。更に、小泉首相は、日本の今日の繁栄は、第二次大戦で犠牲になった兵士たちのお陰であると述べているが、この言い方は、恰も、日本の中国侵略や真珠湾攻撃を正当化しているように聞こえる。但し、米国はこれらの点については、これまでのところ特に言及はしていない。
中国側は、小泉首相との会話はもう諦めたようであるが、噂される後継者、特に麻生外相は小泉首相と同様な意見を持っているようである。先日、上海勤務の日本外交官の自殺を巡って、麻生外相は中国の脅迫によるものだと発言した。しかし二日後にはこの発言を、単なる仮説であったとして撤回した。もし麻生外相の気が再度変わらない限り、本件は落着したと言えよう。しかし他の多くの問題で、麻生氏は頑なな姿勢を保っている。
しかし両国が対話を続ける意思を表明していると言うことは、両国とも関係改善を望んでいるということであり、更に米国がより積極的な役割を演ずるようになれば、希望は広がろう。
英語の原文: "Japan and China: Dialogue of the Deaf"
http://www.glocom.org/debates/20060301_ching_japan/