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注目記事 (2006/3/20)

Opinions:
 
「地域の子育て機能を高めよ」
 島田晴雄  (慶應義塾大学教授、富士通総研経済研究所理事長)
  
  少子化対策が国の戦略として重要性を増している。近年、少子化を所与とする一種のあきらめの風潮もあるが、フランスやスウェーデンなど少子化を改善した経験もある。少子化対策は国の未来への希望につながる最も重要な施策である。
  第一に、出産と幼児保育の環境整備については、まず出産や不妊治療を健康保険の対象とする。また、規制改革により民間保育所が多様で潤沢なサービスを提供できるようにするとともに企業のネットワーク型保育サービスを推進すべきである。
  第二に児童の保護と育成については、熟年者が放課後の児童を自宅や施設などで親が帰るまで預かり、生活の知恵などを伝える「生活塾」構想と「子育て支援タクシー」を広げるのが有効である。
  第三は仕事と子育ての両立であるが、仕事の配分などでの柔軟工夫、父親の育児休暇の活用、育児休暇後の職場復帰とキャリア継続などに加え、職場に企業内保育所の設置を義務づけ、従業員や地域社会でのネットワーク型の利用を進めることも有益である。
  これまで、少子化傾向に拍車をかけてきた大きな要因は、結婚そのものが減少してきたことだった。しかし、近年では結婚五ー十五年の夫婦の平均出生児数が顕著に減少しており、結婚した夫婦でも子供を産み育てることが難しくなりつつあることを示唆している。その意味でも、出産、子育てための環境整備が急務である。

英語の原文: "Improve Child-Raising Capabilities of Localities"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060320_shimada_improve/
Debates:
 
「これからの米中関係」
 ジョセフ・ナイ  (ハーバード大学教授)
  
  中国の国防予算が来年も14%も増加することを踏まえ、米国内では同国との安全保障について意見が分かれている。何れ米中の確執が表面化することは避けられない、という意見と、中国は1990年以来の善隣外交を通じ、問題解決のためのソフトパワーの利点は弁えている、と言う意見である。どちらが正しいか今は分からないが、「衝突は不可避と考えること自体が衝突の大きな要因になる」、と言う格言は覚えて置く必要がある。
  「中国の興隆」と言うのは誤称であり、実際は「再興」と言うべきである。中国は少なくとも紀元五百年から千年間は東アジアの大国であった。1820年にはアジアは世界生産の60%を占めていた。それが1940年には20%に低下し、また2025年には60%に戻ると言うアジア開銀の試算がある。確かにアジアには日本やインドも含まれるが、しかし中国の高度成長と、そして儒教の思想が域内での中国のソフトパワーを強化した。
  中国が今のペースで成長しても2025年にはまだ米国経済の三分の一の規模であり、洗練度にも格段の違いがある。経済成長が続く限り、中国は軍備増強を図ることが予想されるし、それが地域の緊張を喚起しないとは言い切れない。しかし現代の軍事バランスは、狭義の軍備のみならず、情報収集と分析力が大きなウェイトを占める。その意味でも、中国が米国と拮抗することは当分無い。
  弱者が追い詰められると強者に歯向かうと言う例は、歴史上日本の真珠湾攻撃や、中国の朝鮮戦争参戦などあった。しかし今世紀中に米中が戦争を始める必要は無い。平和な中国は中国自身のためにもなる。重要なのは、両国とも疑心暗鬼に陥らないことである。

英語の原文: "The Future of U.S.-China Relations"
http://www.glocom.org/debates/20060317_nye_future/
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