米国の影響下にあると言われた南太平洋は、今中国の勢力範囲に組み入れられつつある。米国及びその同盟国が公館や援助を減らし始めた90年代以来、中国は積極的にこの地に働きかけを行っており、現在、各国中最も多い9つの公館をこの地域に保持している。
その理由の筆頭は台湾問題である。太平洋諸島フォーラム加盟の、豪・NZを除く14カ国のうち、八カ国は中国、六カ国が台湾を承認している。中国は、援助や貿易協定をはじめとする優遇措置で、同国への支持を増やしている。
しかし台湾問題だけではない。中国が必要とする資源、特に鉱物・木材・魚介類を得るためにも、援助や投資が活発に行われている。外交戦術も多用される。地域各国の首脳の多くは就任直後に、おそらくは中国の負担で且つ援助の上乗せを匂わされ、北京詣でを行う。1997年に中国がキリバスに衛星追跡基地を設けた。宇宙開発支援という名目であるが、近隣のマーシャル群島にある米軍基地監視用との噂が絶えない。
現在はまだこの地域は、米日豪NZそしてEUに親近感を抱いているが、この五年間で中国は援助や貿易以外にも、中国製テレビ番組の放映、留学生交換、中国からの旅行者の増大等により急速に地歩を固めつつある。これらの活動は米国が90年代以来撤退している分野を中国が埋める形で進められている。このままでは、地域全体が親米から親中に傾くのは時間の問題である。
英語の原文: "China Woos the South Pacific"
http://www.glocom.org/debates/20060322_shie_china/