政府系金融機関改革は、郵政事業民営化と並ぶ小泉政権の重要課題である。政府系金融機関と郵貯・簡保は連携して巨大な公的貸出し機関として機能しているからである。これら政府系金融機関は、低コストの原資が調達可能であるのみならず、政府からの投資や補助金をもって漸く赤字を免れている。民間に投資すれば得られたであろう配当・キャピタルゲイン・そして税金が、政府系金融機関を維持するための機会費用となっている。この費用を過去十年間にわたって試算してみると、毎年10兆円に及ぶ政府のコストが発生しており、そのうち70%が赤字補填、30%がこの機会損失となっている。
政府は政府系金融機関のうち、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫を民営化、公営企業金融公庫を廃止、残り五つの機関と国際協力銀行の一部を統合し、新たな組織をつくることとした。しかし民営化される二機関はそれぞれ厳しい現実に直面することになろう。また、統合により生まれる巨大な金融機関は、大手都市銀行に匹敵する規模になるが、元となる機関のこれまでを見ると、五機関合計で年間千三百億円余の政府補助を受けていたことが分かる。
このままでは統合しても成り立って行かない。当面、補助を半減することを目標にしても、厳しい監督の下での運営が必要となる。監督機能を補強するために、例えば新機関の経営者を提訴する権利を国会議員に与える等の施策が考えられよう。
英語の原文: "Public Lenders Need Tough Oversight"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060410_fukao_public/