オーストラリアとニュージーランドがこれまで多大な努力を傾注してきたことにより、南太平洋の中小諸国の安定と繁栄はこの十年間で著しく進歩した。しかし今月初の温家宝中国首相によるフィージー訪問はこれまでの豪・NZの努力を台無しにしかねない。
ややもすると機能不全に陥る各国の政権安定化策の一環として、豪・NZの援助は紐付きに重心を置くようになってきた。しかし、南太平洋各国を資源供給地域と見る中国は、地域の健全な政府や安定した経済には興味がない。また中国だけでは無く、台湾もこの地域には無定見な資金援助を行って来ており、それぞれの支持国の奪い合いの様相も呈している。
豪・NZの安全にとって、南太平洋諸国の安定と繁栄は必須である。豪・NZの援助は、代わりに現地政府の健全な統治と汚職追放を要求するものであり、この政策はこれまでかなりの成果をあげてきた。しかし明らかになった中国と地域諸国の合意を見る限り、各国政府は中国が提案するアンタイド援助に惹かれているようである。豪・NZが折角地域の安定のために費やしてきた努力が水泡に帰する虞がある。
英語の原文: "Undermining Australia and New Zealand: Beijing Stirs Up South Pacific Waves"
http://www.glocom.org/debates/20060412_barns_undermining/