経済環境が好転しつつあるが、企業はものづくりの基本に立ち返り、これからの成長に備えなければならない。ただしここで言うものづくりとは、モノとしての製品のみを指すのではなく、商品の企画から生産、そして顧客への受け渡しに至る全体の意図と過程を含むものである。そしてこの結果が形あるものであれば製造という過程が関わり、無形のものであればサービスの範疇となる。つまりものづくりの考え方は、製造・サービスを問わず適用できるものである。
ものづくりを実際に企業の収益に結びつけるには四つの段階があり、それぞれを高い水準で達成する必要がある。第一は、ものづくりの考え方を実践するための基礎となる生産性の高い日常的な業務遂行能力である。トヨタ方式など、所謂TQCが一例として挙げられよう。第二は、外部から見えないという意味での不可視的競争力、即ち現場の実力である。狭義の生産性や開発期間などがこれに含まれる。第三は、市場での成績という可視的競争力である。これは、顧客にとっての商品の魅力や、価格やブランドを含む市場の反応等である。そして最後に収益力であるが、これは利鞘や株価等を基にした株式市場での企業評価が大きく影響する。
より具体的には、多くの企業に於いて生産性が低い部門に競争力をつける必要がある。所謂2007年問題により現場の熟練者が職場を去ることへの対策や、パートに頼ることを止め、寧ろ多能工を育成するなどの施策が有効であろう。環境が好転し、自信過剰に陥りやすい今こそ、企業は自らの能力を強化するという地道な努力が必要である。
英語の原文: "'Monozukuri' Skills Essential for Growth"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20060515_fujimoto_monozukuri/