小泉首相の訪米に際して示されたブッシュ大統領の応対振りは、多くの日本人には過分とも見える大歓待であった。これは確かに両氏の個人的な親しさを反映したということもあるが、まさに今の両国の緊密な関係を表したものである。大統領にとってはイラク攻撃を始めとする所謂テロとの戦いを小泉首相が一貫して支持したことは非常に重要であった。
一方、小泉首相は、国内でも意見の分かれる靖国参拝に関してと同様に、米国との緊密度を際限なく増してゆくという今の政策について釈明をしたことは無い。靖国問題も米国との連携もその元は先の戦争…日本人がその責任を未だに追求し尽していないあの戦争…にある。
米国との軍事同盟は廃止すべしという主張は、旧社会党が消滅するとともに、国民からは非現実的な選択肢として見られるようになったようであるが、だからと言って無条件で米国との同盟関係を更に深めて良いと言う事ではない。五月に合意された「再編実施のための日米のロードマップ」は日本の将来にとって重要な決定であった。ここでも、特に国会できちんとした議論が行われなかったことに多くの国民は不安を抱いている。
昨年京都においての会合で、小泉首相は大統領に対し、日本が米国と緊密な関係を維持する限り、中国との関係を含む全てが上手く行く、と述べた。しかしもし日米両国が究極的には同じような目標を視野に入れて居るとしても、常に無条件に米国と行動を共にするものでは無い、と言うことを、日本は米国に明確に意思表示しておく必要がある。
英語の原文: "Japan-U.S. Alliance Fails to Put Public's Concern at Ease"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060703_ishizuka_japan/