日本は世界の中でも最も豊かな国であるにも関わらず、将来を悲観する人々の比率が先進国・途上国を問わず他の国々と比較して非常に多い。なかでも深刻な問題は少子化である。1940年代の戦時中の一時期を除き、日本の人口は少なくとも統計が整備された19世紀半ばから一貫して増加していた。2005年に日本の人口は減少に転じ、しかもこの減少傾向は今後長い間続く。
少子化の原因は、女性の結婚に対する消極性と晩婚化、そして多くの夫婦が従来より少ない数の子供を持つ傾向にあることであるが、真の問題はこれらの現象の背後にある。経済的には、一世帯あたりの平均収入が5百万円であるところ、子供を一人育てるには教育費を中心に23.7百万円かかると試算されて居り、大きな負担となっている。にもかかわらず、例えば日米中の高校生に対し行った調査では、未来は明るいと思う生徒が日本24%・米国46%・中国34%、また人生で最も重要なことはまじめに働くことであると思う生徒は日本14%・米国28%・中国34%であった。一方、今を楽しく過ごすことが最も大切、と答えた生徒は日本51%・米国40%、中国20%であった。
何故このような事態に陥ってしまったのか。大きな理由としては、日本人が戦後の高度成長を通じて物質的な豊かさのみを求めてきたことがあげられる。これからは生活の一部として、もっと文化的な価値を求める態度が必要である。これまでに蓄積された富を文化的豊かさ実現のために使うべきである。
英語の原文: "Japanese Need to Re-examine Their Views on Affluence"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060724_ishizuka_japanese/