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注目記事 (2006/7/31)

Debates:
 
「WTOドーハ・ラウンド:未だ可能性が絶たれた訳では無い」
 マイク・ムーア (前WTO事務局長、元ニュージーランド首相)
  
   WTOの多角的通商交渉、ドーハ・ラウンドが凍結と言う事態に陥った。公式に交渉が取り止めになった訳では無いが、2001年にカタールのドーハでの合意に基づき開始された今回、交渉への熱意が失われたことは否めない。そして更に残念なのは、事前に充分予想され、懸念された事態を回避できなかったことである。
  世界的な危機感を背景に成立したドーハ・ラウンドは、2003年のカンクン閣僚会議で既に実質的に後退を余儀なくされていた。2005年末の香港閣僚会議は機能せず、日程終了まで誰も途中で席を立たないことに「成功」した、という皮肉な評価が与えられた。先週末、ついに主要六者(日・米・EU・豪・伯・印)は、交渉の合意には到底至らないと言う見通しで合意した。今後交渉が継続されるとしても、最大の問題は米国のファストトラック(大統領への通商交渉の権限付与)が来年末で切れることである。
  交渉失敗の責任は交渉当事者全員にあると言えよう。米・EUのみならず、途上国の側も譲歩が必要であった。これから夏休みシーズンの間、関係者は交渉の再起動に知恵を絞ることになろう。しかし、ラミー事務局長の能力と熱意をもってしても、そもそも存在しない妥協点を創作することは困難である。
  今、多くの国の政府が、自らに不利な状況に接すると、それを国際機関のせいにするという風潮がある。然しWTOは、叩けば自分に都合が良い結果が生じる、と言う存在では無い。WTOをないがしろにして崩壊へ導くことは、世界を暗く、危険な、そして予測困難な場へと導くことである。

英語の原文: "Doha Trade Round: It's Not Over Yet"
http://www.glocom.org/debates/20060728_moore_doha/
Debates:
 
「東南アジアで米国は影響力を如何に再構築して行くか」
 エレン・フロスト (米国防大学国家戦略研究所フェロー)
  
  ASEAN各国は米国が東南アジアに興味を失っているのではないかと危惧しているが、米国はテロやイラク問題で忙殺されてしまっている。そもそもASEANが米国に失望したのは1997-98のアジア金融危機の際、期待した支援を受けられなかったことに端を発する。特に、その数年前のメキシコ危機に際して採った米国の対応と余りにも違ったことが、米国を頼りにならない存在と印象付けた。
  この隙を利用して大きく勢力を伸ばしたのが中国であった。その後中国は貿易・援助・金融・文化・観光そして安全保障の面でこの地域に大きな影響力を得た。中国はASEAN+3を上手に利用しているのに対し、米国も加わるAPECは勢いを失っている。近年中国は、ASEAN+3の中で、米国の同盟国である日本の無力化を画策しつつ、各国に対しては、米国との安全保障関係を見直すよう迫っている。
  米国としては、地域への影響力を復活させるため、バランスの取れた政策を実行してゆくべきである。第一に、東アジアサミットに参加するためにまずはTAC(東南アジア友好協力条約)に加盟すること。第二に、従来消極的であった米-ASEANサミットの開催に踏み切ること。第三に、既にNATO、OAS等で前例があるようなASEAN大使を創設すること。そして第四に、ADBの活動をはじめとする地域の自主的な金融制度構築を支持することである。特に第四点については、1997-98危機の際に提案されたAMF(アジア通貨基金)が米国の圧力をもって潰されたが、これは、一般的に地域のためにならないばかりか、米国の盟友日本の足を引っ張ることになってしまったことを反省すべきである。
  東南アジアの戦略上の位置・五億人を超える人口・そして五千億ドルを超えるGDPの重要性を米国は充分認識し、対策を練る必要がある。

英語の原文: "Re-Engaging with Southeast Asia"
http://www.glocom.org/debates/20060728_frost_re/
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