ASEAN各国は米国が東南アジアに興味を失っているのではないかと危惧しているが、米国はテロやイラク問題で忙殺されてしまっている。そもそもASEANが米国に失望したのは1997-98のアジア金融危機の際、期待した支援を受けられなかったことに端を発する。特に、その数年前のメキシコ危機に際して採った米国の対応と余りにも違ったことが、米国を頼りにならない存在と印象付けた。
この隙を利用して大きく勢力を伸ばしたのが中国であった。その後中国は貿易・援助・金融・文化・観光そして安全保障の面でこの地域に大きな影響力を得た。中国はASEAN+3を上手に利用しているのに対し、米国も加わるAPECは勢いを失っている。近年中国は、ASEAN+3の中で、米国の同盟国である日本の無力化を画策しつつ、各国に対しては、米国との安全保障関係を見直すよう迫っている。
米国としては、地域への影響力を復活させるため、バランスの取れた政策を実行してゆくべきである。第一に、東アジアサミットに参加するためにまずはTAC(東南アジア友好協力条約)に加盟すること。第二に、従来消極的であった米-ASEANサミットの開催に踏み切ること。第三に、既にNATO、OAS等で前例があるようなASEAN大使を創設すること。そして第四に、ADBの活動をはじめとする地域の自主的な金融制度構築を支持することである。特に第四点については、1997-98危機の際に提案されたAMF(アジア通貨基金)が米国の圧力をもって潰されたが、これは、一般的に地域のためにならないばかりか、米国の盟友日本の足を引っ張ることになってしまったことを反省すべきである。
東南アジアの戦略上の位置・五億人を超える人口・そして五千億ドルを超えるGDPの重要性を米国は充分認識し、対策を練る必要がある。
英語の原文: "Re-Engaging with Southeast Asia"
http://www.glocom.org/debates/20060728_frost_re/