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注目記事 (2006/9/4)

Opinions:
 
「21世紀の日本とアジア―共生を超えて」
 木下俊彦 (早稲田大学教授)
  
  アジア諸国は1990年代後半の通貨危機以降は順調に回復し、平和が続く限り今後も高い成長が見込まれている。そうした中、世界中の企業が成長センターである中国やインドなどに集まってくる。それに対して、日本経済は回復したが、アジアでのプレゼンスは80年代に比べて低くなった。アジアの人々は日本の経済回復を歓迎してはいるが、その回復の原動力となったハイブリッド型の日本の経営モデルは理解されていない。それ以上に、急成長する中国やインドへの関心が高くなってしまった。
  日本と東アジアとの貿易は、日本と欧米との貿易の伸びを大きく凌駕するなど、アジアは日本にとって重要であり、EPA(経済連携協定)や FTA(自由貿易協定)の戦略でも有意義なものとすべく、投資分野での協力などを含めて進めているが、交渉状況はなかなか厳しい。しかし、このような協定は水準の高いものでなければ意味がないので、焦らず1つずつ問題を解決していくことが重要である。
  現在、中国やインドでは、高度人材の奪い合いが起こっている。もともと欧米企業は高いレベルの人材を高給で採用し、積極的に登用してリーダーとするという方法をとるのに対して、日本企業は日本での方法を少しずつ修正していくというものである。従来は、中国などでは、欧米企業と日本企業が人材市場でもすみ分けされていたが、これが近年急速に変容しつつあり、高度な人材を採用・維持することがより困難になってくる。日本企業も大胆な現地化の加速、PR投資拡大、産学協同などを考えなければならない。
  アジアとは共生を超えて進むしかない。21世紀は、日本と中国、インドが併走、欧米も参入してくるので、どの国にとっても厳しい競争となる。大事なことは新たな仕組みづくりであり、将来のビジョンを持ち、グローバルかつローカルに適切に対応することである。日本の強さはものづくりの分野であり、環境や省資源や金融協力の分野であるが、アジアの相手国の得意分野も評価し、育てて一緒に成長していくという姿勢が重要である。さらに政治的には米国と連携しつつアジアと共生するという方策をとり、これを強くアピールすべきである。東アジア共同体については、EUのような共通基盤がこの地域にはないため、すぐに実現するとは考えられない。日本企業は、異文化経営を前提としながら、人材確保とネットワークづくりに努めるべきであろう。

英語の原文: "Japan and Asia in the 21st Century: Beyond Coexistence"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20060904_kinoshita_japan/
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