ロシアがアジア地域への勢力拡大を図る中、フラトコフ首相による中国訪問が来月予定されている。この地域で急速に拡大するエネルギー需要に対し、潤沢な資源を持つロシアが積極的な提案を行う可能性がある。東アジアの中で、ロシアのアジア政策により最も恩恵を受けるのは中国であろう。日ロ関係に領土問題が付き纏っているのに対し、中ロ間では長年に亘る領土紛争を2004年に解決した。今や政治・軍事・貿易投資の面で両国の緊密化が進んでおり、更に両国は、米国とその同盟国によるアジアでのプレゼンスに拮抗するという方針を表明している。 先月、プーチン大統領は、中ロ関係が現在史上最も好ましい状態にあり、この状態がこれからも続くであろうと表明した。この結果として、エネルギー面からの日本の先行きが不透明になり、延いては米国のアジア戦略も影響を受けることになろう。
一方、ロシアはこの先10-15年の内に、現在全体の3%に留まっているアジア向けのエネルギー輸出を30%にまで引き上げる方針を発表した。この発表は現在交渉が難航している欧州向けエネルギー輸出交渉を牽制する面もあるかも知れないが、プーチン氏は、急成長しつつあるアジアとより強い関係を持ちたい、と表明している。先日停止されたサハリンの油田・ガス開発についても、アジア地域のエネルギーを戦略的に利用するため、一元管理を強化しようとするロシア政府の方針の一環と捉えられよう。
この間、中国はロシアとの間にパイプラインを繋ぐために躍起となっている。中国は昨年、同国のエネルギー輸入の10%にあたる13百万トンの原油をロシアから輸入したが、高コストな貨車に頼る必要が無ければ、更に急激な増大が見込まれる。ロシアは輸出拡大、中国はエネルギー確保、と言う夫々の観点からは両国の利害は一致しているように見える。
しかしながら、ロシア側は、シベリアのタイシェトに発するパイプラインの終点を、中国にするか、或いは、日本をはじめ他の国々への輸出が可能となる太平洋岸まで伸ばすか、明確にしていない。安定したエネルギー供給の絆が構築されないうちは、中ロ関係も堅固なものとは言えない。
英語の原文: "From Russia, Eastward Flows the Energy"
http://www.glocom.org/debates/20061006_richardson_from/