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注目記事 (2006/10/23)

Opinions:
 
「日本にも真の『保守』が根ざす兆し」
 石塚雅彦 (フォーリン・プレスセンター評議員)
  
  政治的概念としての「保守」はアイルランドのエドマンド・バークがフランス革命の混乱を否定的に捉える過程で哲学的基盤を与えたとされる。これに拠れば、保守主義は、価値あるものを継承するということであり、破壊的な過程は否定しつつ進歩そのものは肯定的に捉える。この観点からすれば、明治維新以来の文明化やその後の挫折、更に経済復興を通じ日本は常に慌しく変化し、「保守」であったことはない。「保守」という用語が、常に否定的な意味で捉えられてきたのも理解できる由縁である。
  学者やメディアは自民党を「保守」と呼んで来たが、実行してきたのは、公的資金を国の隅々までバラ撒き、平等な社会を実現する、と言う、党名に見られる如くまさに「自由」主義であった。他方、旧社会党等の勢力は、「革新」の名の下、冷戦下での反米左翼と言う立場で自民党に対抗した。即ち、日本ではこのような「革新」に敢えて比較すれば「保守主義的な」自民党が勢力をもっていたということであり、真の「保守」は存在しなかった。
  政治以外でも、日本は社会的な保守主義からは程遠かった。経済的豊かさが実現される過程で生活習慣や家族関係の変化が急激な変化に晒された。その間、これに対抗すべく試みられた所謂保守主義は自らの立脚点を見出せず、大衆の支持を得られなかった。
  安倍晋三氏は、戦後初の国家主義・保守主義の首相であると言われ、確かに家族・地域・国・歴史・伝統等に重きを置く旨発言している。しかし、一方でグローバル化・市場経済化を目指す政策と如何に整合させるかはこれから良く見る必要がある。就任演説で、安倍首相は、自らが戦後生まれであることを強調した。これには見かけより深い意味がある。既に人口の大半が戦争の記憶を持たない中で、今漸く、あの戦争のトラウマを背負わない世代が総理大臣になった。安倍首相の登場は、日本の政治パラダイム変革の兆しかも知れない。

英語の原文: "Conservatism, Long in Shadows in Japan, Starting to Take Root"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20061023_ishizuka_conservatism/
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