北朝鮮が六カ国協議に出席すると表明したことにより、とりあえず、米朝二カ国協議の是非の議論は先送りされた。六カ国協議の裏で行われる非公式な二カ国の会談により、二カ国協議を要求した北朝鮮と、あくまで六カ国協議の場での交渉を主張した米国双方の顔を立てることが出来ることとなる。
ただし協議が行われても、北朝鮮が核開発を中止する可能性は殆ど無い。所謂核クラブへの加盟により国際社会での自国の地位を引き上げるという政策の下、漸く得られた立場を北朝鮮が容易に放棄するはずは無く、一方、米国は、核を保有する北朝鮮という存在自体を認めないとの姿勢を堅持している。そこで焦点となるのは、核を放棄する見返りに、北朝鮮が何を要求するかである。
昨年六カ国協議が中断する直前の議論で、北朝鮮は、核兵器開発中止の見返りに、エネルギー問題改善のための原子力発電設備の設置を要求した。しかし、94年の米朝協定を一方的に反故にした上、査察を受け入れないと言う北朝鮮の対応は、他国に受け入れられるものではなかった。今回、北朝鮮としては、実際の核兵器を手に入れたことにより、従来に増して強い立場で交渉に臨めると思っており、同様の要求を行って来るであろう。
今回予定される六カ国協議にあまり期待してはいけない。それは長い苦闘の道のさらなる一歩に過ぎない。北朝鮮は、核保有国というステータスを手に入れたことの誇示、そしてその一環として国際的な交渉力が強まったことの確認の場として六カ国協議を利用しようとしている。一方他の五カ国は、北朝鮮のばかげた要求に対しどこまで断固たる姿勢を一致して貫くことができるか、必ずしも明らかではない。
英語の原文: "Nuclear Talks: A North Korean Party Trick?"
http://www.glocom.org/debates/20061102_kirk_nuclear/