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注目記事 (2006/11/20)

Opinions:
 
「レオンチェフ教授の貢献:国際レオンチェフ賞受賞記念講演」
 宍戸駿太郎 (国際大学・筑波大学名誉教授)
  
2006年の国際レオンチェフ賞受賞者は7人で、宍戸教授以外に、ローレンス・クライン・ペンシルベニア大学教授やロバート・ソローMIT教授のような著名な経済学者が含まれている。授賞式は2006年9月30日にロシアのサンクトペテルブルクで行なわれた。

  ワシリー・レオンチェフ教授は、数々の精力的な活動を通じて、現代経済学に貢献しただけでなく、地球環境問題や平和の問題に対する政治思想の発展にも貢献した、まさにグローバルなスケールの学者であった。その意味で、21世紀こそレオンチェフの英知を必要とする世紀に他ならない。人類はいまや狭くなった宇宙船「地球号」で環境、資源、安全保障など、山積し複雑化する諸問題をレオンチェフモデルの整合的な枠を用いて対処すべき時である。このような重要な時期に、レオンチェフ教授の郷里であるここロシアのサンクトペテルブルクで、国際ワシリー・レオンチェフ賞を受賞するのは、私にとってこの上ない名誉なことである。
  レオンチェフモデルは一国の経済社会計画にとって予想以上の成果をもたらした。1960年代の日本の国民所得倍増計画が10年間で平均10%の高成長を実現した背景には2つの理由があった。一つは政府の司令塔での計画において60部門の産業についての指示的成長目標がレオンチェフモデルによって周到に設計され、実現されたこと、もう一つは産業界がこの計画によって自信をもち、熱心に対応したことである。このように政・産・学の協力体制の促進にレオンチェフモデルが果たした役割は極めて大きかった。その後も石油ショック、円高ショックなど日本経済の難局に際してもレオンチェフモデルはその対処について重要な役割を演じている。政府は他方で産業連関表の継続的な作成という難事業を続け、貴重な政策情報の提供を今も行ってきている。
  一方、産業界の熱意は、学者グループが産業連関分析推進のための独自の学会(PAPAIOS)の設立に際しても、十分に発揮されている。とくに財界のリーダーの一人であった中山素平氏(元国際大学会長)は、この設立に対しても中心的な努力を惜しまれなかった。奇しくも同氏はレオンチェフと同じく1906年生まれである。両氏の貴重な交流の成果は長く歴史に残るものと確信する。
  日本経済はまだ1990年代に入ってから続いた減速化の傾向からまだ脱し切れていないが、われわれが長年開発してきた日本経済のレオンチェフ・ケインズ型モデルは再活性化の軌道を目指して多様な選択肢を分析結果として提供している。今後とも産学官の協力を一層強化し、充実した成果が上がる事を期待したい。

英語の原文: "Professor Leontief's Contributions: Acceptance Speech for International Leontief Award"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20061120_shishido_professor/
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