安倍政権は、日本版国家安全保障会議(NSC)の創設をめざし、その検討のための会議を立ち上げた。NSCの情報収集能力を期待する議論があるが、本家米国のNSCは単なる情報機関ではなく、正副大統領と国務・国防・財務長官を公式メンバーとする意思決定機関である点、日本とは大きく異なる。
日本では、首相補佐官の権限強化のため、関係省庁への指揮監督権を与えようとする動きもあるが、そもそも議院内閣制は首相個人ではなく、内閣全体に行政権を与える制度である。補佐官に権限を付与することは、議院内閣制の根幹を揺るがすうえ、不必要な対立と指揮系統の混乱をもたらす可能性も強い。そのような権限を付与するには、補佐官より、既に制度化されている官房副長官のほうが有効だろう。
NSCの重要な役割のひとつは、情報の受け手としての機能である。各情報機関からの情報を蓄積する制度は現在日本に無い。各機関からの情報の受け手としてNSCを指定すると同時に、全政府機関に対する情報請求権を与え、情報分析と蓄積の機能を持たせる必要がある。NSCは担当副長官の下に、政府内外から精鋭を集め、各機関から得た情報を政策に反映し、首相を補佐し、指示を伝達する司令塔となるのが望ましい。
憲法が外交の権限を与えているのは外務省ではなく、内閣である。主要な外交政策は官邸主導で進め、外務省がそれを助けるという形が民主的外交には望ましい。
英語の原文: "Suggestions for Japan's National Security Council"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20061206_shinoda_suggestions/