東アジアサミットという枠組みが成立して以来一年以上になるが、話し合いの場としての役割を超えた、一致して何かを行うグループ、と言う観点からは、未だ確固たる方向感が見えない。各国首脳が一致して採り上げるに相応しいテーマは幾つかあろうが、中でも、16カ国全体に関わる重要な問題としては、気候変動が挙げられる。先日、気候の変化が欧州大陸へ与える影響についての詳細な報告がEUにより纏められたが、アジア太平洋地域ではこのような研究は無い。しかしアジアでも、温暖化ガスの排出を抑制しつつ経済成長と貧困からの脱出を目指すためには、この方面での基礎研究が必要である。例えば海面の上昇などは、各国に共通した具体的な問題である。
世界第二のエネルギー消費国となった中国では、GDPあたりエネルギー消費量を2010年までに20%削減しようとしているが、電力の75%を石炭に頼る現状では実現は非常に困難である。インドもまた石炭の消費が増加しつつあるが、その一方で、オーストラリアとインドネシアは主たる石炭輸出国となっている。各国の中では日本がエネルギーの効率的利用の面では遥かに先行している。
この地域の気候変動に関する科学的な研究を各国合同で行うことは、現状を認識することに加え、各国関係者の意識を共同して高めることに通じる。そして、それを首脳の集まりであるサミットが強力に支持することは、域内のためのみならず、域外に対しても、この問題に対する参加国の合意と強い意志を示す機会となろう。
英語の原文: "When the Heat is On - at the East Asia Summit"
http://www.glocom.org/debates/20070112_richardson_when/