日本はこの4月にASEANとのEPA(経済連携協定)に関して正式の交渉を行うが、今春合意という目標達成は楽観できない。実際に、日本はASEAN各国との2国間EPAを先に進めてきているので、各国は日本とASEAN全体との間での交渉を急ぐ必要がなくなった。しかし同時に、ASEAN各国は日本への農産物輸出のための協定を望んでおり、また日本からの投資を呼び込みたいので、合意へは向かうが、あと1年くらいかかるのではないか。
日本側でも、日本の貿易に占めるASEANの割合は12.7%程度なので、EPAからの利益が農業への打撃といった損失を上回るかどうか分からず、拙速は避けるべきという意見もある。しかし、中韓がFTA(自由貿易協定)やEPAの交渉で日本よりも先んじているため、もし今回の交渉が失敗すれば、日本製品は中韓の製品に対してASEAN域内で各国
ごとに異なるアレンジに直面するため不利になるので、この1年ほどの間に合意にいたると思われる。
いずれにしても、日本のEPAの交渉では常に農業がやっかいな問題になっている。しかし日本は、石油の輸入が止まれば化学肥料や殺虫剤などが枯渇するから、どうやっても農業立国にはなれない。そうであれば、あまり高い食料自給率に固執する意味はない。例えば、熱帯の果物や砂糖は自由に輸入させ、コメの輸入もある程度受け入れて、影響を受ける農家には補助金などで他の産業に転換させればいい。
農業改革は日本のEPAやFTAの交渉を成功裡に行うために必要不可欠である。しかしさらにそれは、日本がWTO(世界貿易機関)のドーハラウンドの交渉で主導権を発揮して、世界経済の保護主義の動きをチェックするためにも重要である。日本は、米国やEUと違って自分の周りの経済圏域の中だけでは生きていけず、世界中の資源や市場を必要としている。したがって、日本は自分のためにも国際的な交渉を成功させる上で、農業やサービスの分野で大胆な改革を実行していくべきである。
英語の原文: "Agricultural Reform Necessary for Japan's EPA with ASEAN"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070402_kinoshita_agri/