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注目記事(2007/4/16)

Opinions:
 
「情報社会で爆発するソーシャルメディア」
 湯川鶴章 (国際大学GLOCOMフェロー・時事通信編集委員)
  
  「ソーシャルメディア」とは、一般の人々が自分たちの感情や意見を自由に表現して、お互いの理解や楽しみのために交流するような「参加型メディア」のことである。例えば、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のようなソーシャルメディアの出現が「ウェブ2.0」の議論で強調されたが、その後の携帯メディアや仮想現実などの発展を詳細に検討した結果、現在はソーシャルメディアが爆発的に普及しつつあり、その社会的影響はいまやビジネスやマスコミなどの既存の組織が無視できないものになっているというのが、この論文の結論である。
  ただし、日本人は少なくとも欧米人と比べるとあまり自分を積極的に表現できない(あるいはしたがらない)ので、日本でのソーシャルメディアの発展には限界があるという議論がよく出される。しかし、それには同意できない。どの国でも人間は本質的に同じで、色々なタイプの人間がおり、一般的に言われているほど日本人は特殊ではない。現時点で、国によって表現意欲のレベルや創造力発揮のレベルに違いがあるかもしれないが、人々の自己表現に関する限り、そのような差が縮小し消滅するのは時間の問題であろう。
  「ウェブ2.0」の議論で、グーグルがネットの世界で支配的な役割を果たすといわれているが、それは情報のデジタル化が加速するなかで、ネット上にあふれる情報を検索し整理する必要性は高まるばかりで、その中でグーグルの技術力や経営戦略が圧倒的な強みを持っているために、不可避的な展開のように見える。そのためにグーグルは、情報社会における「全能の神」ともいわれ、その技術がグローバルなスタンダードとなり、そのデータベースがグローバルな社会インフラとなることで、あまりに強力で支配的になりすぎるのではないかという恐怖感が表明されるようになっている。
  しかし、ネット上のデータ通信量のうち検索がコントロールできるのは5%程度にしかすぎない。これまではインターネットは「図書館」のようなものであって、そこでは利用者にとって検索機能が最も重要なツールであったが、今やソーシャルメディアの時代に入り、いわば「公民館」が増えて、様々な活動が催され、人々はお互いから学びあうようになった。そこでSNSやブログが普及するにつれて、検索エンジンがコントロールする範囲は相対的に縮小しつつあり、また検索についても、モバイルの分野ではグーグルは必ずしも支配的な強さをみせていない。例えば、日本ではいくつかのモバイルの検索エンジンがユーザー情報をうまく活用してパーソナライズされた検索サービスで強みを発揮している。
  今や人々の自己表現意欲と創造力が自由に解き放たれる時代に入っており、独占的なメディア企業が、グローバルに爆発する情報をコントロールすることは不可能になった。このような世界では、日本であろうとどの国であろうと、重要なのは人々が恐怖感ではなく、夢や希望を持って、自己の創造力で展開するソーシャルメディアを通じて自己を表現することにより、それらを追求していくことではないだろうか。
  参考文献:湯川鶴章『爆発するソーシャルメディア』ソフトバンク新書(2007年)

英語の原文: "Exploding Social Media in Information Society"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070416_yukawa_explode/
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