北朝鮮問題に直面し、また潜在的には中国に対峙して、米国の核戦略が日米同盟の主要な懸念材料の一つになってきた。米国の戦略上の確約が、日本にとってもその潜在的な敵国に対しても必要である。しかし、もっとも重要なのは、「基本に戻る」というアプローチである。日本は長い間、米国の核の傘によって守られ、冷戦時代を通じて、米国の核抑止力が日米同盟の基礎となってきた。日本がいかなる国から攻撃を受けようとも、米国が核兵器によって報復攻撃をするという見通しが、敵を抑止するに十分と考えられてきた。
しかし、昨年10月9日の北朝鮮の核実験は、米国の核抑止力が北朝鮮から日本を守るのに有効かどうか日本に疑念を与えた。そのような恐怖心が、日本自ら核を保有するか、あるいは敵の基地に先制攻撃を加えられるようなミサイル体制を準備すべきという議論が出てきた背景にあるといえる。
これに対して、コンドリーサ・ライス国務長官は、北朝鮮の核実験の直後に訪日した際に、あくまで米国は日本を守ることを公式に再確認した。それにもかかわらず、日本の一部では、米国は六カ国協議を急ぎすぎており、核が拡散しない限りは北朝鮮の核武装を許容するのではないかという疑念の声が上がっている。
米国政府がバンコ・デルタ・アジアの資金凍結を解除したことは、日本と北朝鮮の対話で何の進展がなくても、北朝鮮とのやりとりを一方的に進めてしまうのではないかという日本側の懸念を増大させている。日米両国政府の拉致問題に対するする優先順位の違いから生じたギャップが、日本の防衛に対する米国のコミットメントを弱めているとみなされてしまう。
これに対する明白な答えは、六カ国協議の究極的な目的が朝鮮半島に非核化であると六カ国すべてが合意したことである。それは以前1992年の南北宣言にもあったが、2005年9月19日の共同声明、および2007年2月13日の合意や協定で明らかにされている。
それでも日米間に生じた懸念は、人の問題によって助長された面がある。2期目のブッシュ政権は1期目と異なり日本専門家や日本支持者が少なく、安倍政権への批判を述べる政府高官も出てきた。また北朝鮮との妥協を急ぐクリストファー・ヒル国務次官補のやり方も、米国の政策に不信感を持たせた面があろう。このような不安を起こさないためにも、両国は核問題に焦点を合わせた戦略的な対話を始めるべきである。戦略的基本事項を把握することは、どんな同盟関係にとっても基礎となり、核問題を明確に理解することは、日米同盟の将来にとって不可欠なことである。この同盟関係を今後も持続させるために、誠実にお互いを心から理解し、単に核兵器の役割だけでなく、戦略の全体的なプロセスを正しく把握し合意することが大切である。
これは、日本が核兵器を持つべきという議論ではない。むしろ逆である。自国で核を持つことは、日本に安全をもたらさず、日本の国益に反することになろう。しかしその結論は、注意深い分析の結果であるべきであって、いつ恐怖感によって覆るか分からないような感情的なレベルの議論の結果であってはならない。
英語の原文: "Nuclear Basics for the Alliance"
http://www.glocom.org/debates/20070420_gloss_nuclear/