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注目記事(2007/5/28)

Debates:
 
「対米関係に不安を抱く日本」
 ラルフ・コッサ (CSISパシフィック・フォーラム会長)
  
  今日の日米関係は、最近の訪米時の安倍首相とブッシュ大統領のキャンプ・デイビッドのサミットによって両者は新たな親友となり、より強固なものとなった。それは昨年秋の小泉首相の退任が「特別な日米関係」の終焉になるのではないかという危機感を和らげるのに十分なものとなった。それにもかかわれず、ほとんどの日本人が対米関係を心配しているようにみえるのはなぜか。
  日本政府関係者や日米の研究者は、その憂慮の元は新たな「ニクソンショック」であると指摘する。当時は米中の突然の和解であったが、今回は北朝鮮に対してである。これは、2月13日の六カ国協議の合意において、米国が核交渉を優先して、北朝鮮の違法なマネー・ロンダリングや通貨偽造に目をつぶったことから生じたといえる。
  もちろん交渉に取引は必要であるが、日本政府が懸念するのは、米国が北朝鮮と秘密裏に手を握ってしまうという交渉のやり方である。実際、1月中旬に行なわれたベルリンでのヒル国務次官補と北朝鮮のキム・ケ・グアン外務次官の会談は明らかに2月の交渉を可能にしたものであるが、日本人は何か取引があったのではないかと疑っている。その時の日本の新聞のヘッドラインは、「裏切り」と書かれていた。政府関係者はそれほどヒステリックではなかったが、やなりかなり動揺していた。
  日本人の多くは、米国政府が核不拡散を強調する一方で、非核化への動きは十分でないと感じており、プルトニウムとウラン生産拠点の閉鎖の見返りに、既存の核兵器庫を許すような秘密交渉の進展を心配している。ある日本政府高官は、この交渉の最終目標である北朝鮮の核計画の廃棄をもっと強調すべきで、不拡散などの当面の措置も究極の核廃絶を確認しなければ意味がないと言う。2月13日の交渉では既存核兵器に関する合意がなかったことが、こういった日本側の懸念をさらに拡大しているのである。
  2月13日の合意に関する日本政府の懸念は、非核化に関する点だけでなく、米朝間と日朝間それぞれの関係正常化を呼びかけている点にあった。その結果、それぞれの国の間での対話が始まり、米朝間の対話は建設的に進む一方で、日朝間の対話はそうではなかった。また、それらとは別の対話で非核化と経済援助の交渉が行なわれ、すべて同時に妥結することが目指されたために、日本が足を引っ張っているように見られるか、最悪の場合は日本が朝鮮半島の非核化を阻んでいると見られるようになるのではないかと日本政府は非常に憂慮したのである。
  北朝鮮が最初の約束履行を遅らせていることは、日本政府の懸念を多少和らげたものの、米朝間の交渉を続けるために米国がさらなる譲歩をするのではないかという心配を生んでいる。ヒル大使が今年末までに2月13日の合意はすべて遂行されると楽観的に述べていることが、また新たな秘密合意をもたらすのではなかという新たな懸念を日本側にもたらしている。
  拉致問題については、ブッシュ大統領と安倍首相の間で、この問題の何らかの「解決」なしには米朝関係の正常化はないという点で理解を共にしたと日本政府関係者は信じている。ただし、日本政府は拉致被害者全員に関して納得のいく説明を求めているが、北朝鮮側はすでに解決済みという態度を取っている。安倍首相はこの問題の解決に断固たる姿勢を見せている。
  結局日本政府は拉致問題について「重要な進展」があればよいという程度で妥協せざるをえないと考えているようであるが、いったい何が「重要な進展」なのかの定義については日本政府内でも日米間でも合意がない。したがって、この問題に強硬な立場をとる安倍政権に比べて、ブッシュ政権は外交政策の成功を勝ち取るためにこれを拡大解釈するのではないかと懸念されている。
  新たな「ニクソン・ショック」を避けるためには、日本と米国は、拉致問題で何が「重要な進展」かについて直ちに合意を形成して、それを北朝鮮に明確に示さなければならない。そうしなければ、2月13日の合意か日米の同盟関係のどちらか、あるいは両方ともリスクにさらされることになるかもしれない。

英語の原文: "U.S.-Japan: Why So Nervous?"
http://www.glocom.org/debates/20070511_cossa_us/
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