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注目記事(2007/8/9)

Debates:
 
「安倍首相は続投か辞任か」
 シーラ・スミス (米外交問題評議会ジャパンフェロー)
  
  安倍首相は、今回の参院選の大敗にも関わらず、「責任を果たす」として、自民党総裁と首相の座に残ることを早々と明言し、自民党の首脳に自分を支持するよう要請した。この安倍氏の決断の是非がそれ以来、今もなお問題にされている。これについて民主党は、いよいよ日本にも体制変革の時が来たとして、政権交代を目標に自民党の信任を問う衆議院の解散総選挙を実現しようと意気込んでいる。
  実際に、民主党だけではなく、多くの国民が安倍首相の続投の決定について疑問を持ち、退陣すべきではないかと感じているようである。安倍首相は選挙演説で、「自分を選ぶか、小沢一郎を選ぶか」と問うたが、国民が「ノー」を突きつけた今になって、自らこの問いを無視しようとしている。この点について自民党内でも賛否両論が出ているが、今のところ大勢は安倍首相の決断を受け入れて、当面は内閣改造を行うことで対応するということに留まったようにみえる。これは自民党のメンバーが、党首を完全には支持できないものの、代わりのリーダーも見出せないという党の閉塞状態を露呈しているといえる。
  いずれにしても、首相と与党にはいつかの試練が待ち受けている。第1に、閣僚と党首脳に新しいリーダー格の人材を見つけるということである。それはこれまでの友達仲間からではなく、しかも政権の命運を託せるような人物を探すということで、この点で安倍氏の手腕が問われている。第2に、野党とどのように協調していくかという課題である。今回の選挙結果によって、与党以外の政党が参議院を支配するという戦後初の事態となり、すでに民主党は、政府与党の法案に対応するだけではなく、自分たちのマニフェストに沿った政策を自ら立案し遂行すると主張している。その上、政府与党は本来やるべきことを抱えている。テロ特措法の延長は対米関係にとって重要であるが、民主党の反対に直面している。さらに、税制改正、格差是正、そしてもちろん年金問題などの重要課題があるが、すべて今後は野党との協議や駆け引きがカギとなってくる。
  もちろん、民主党にとっても厳しい試練の時期といえる。今回の選挙結果は、小沢代表の選挙戦術が見事に功を奏したが、しかし民主党の政権担当能力が評価されたものとは言い難い。今後の政策遂行と国会運営に成功することが必要不可欠である。ここで重要なのは、単に政治的な戦略や戦術ではない。政党としての信条や政策の基本が問われており、それが今後の政界再編につながることを多くの国民が感じているとともに期待もしているのである。安全保障・外交政策がその基本線の一つであろうし、国内の 社会経済政策がもう一つの柱になるであろう。
  多くの国民はもう一段階の政界再編が必要と思っているが、政党政治の再編はかなりの混乱をもたらし、自民党の分裂を導く可能性が高い。実際には今回の選挙で、国民は野党に政界再編の機会を与えたと解釈できる。当面は民主党が政権を担当した場合にどのように国会を運営するかがテストされているのである。もし安倍政権が国民の信頼を回復することができなければ、早晩衆議院の解散総選挙となり、その選挙結果こそ日本国民がどれだけの変化を受け入れる覚悟があるかを明らかにするであろう。
英語の原文: "Should He Stay or Should He Go? Japan's Debate Over the LDP's Electoral Defeat"
http://www.glocom.org/debates/20070803_smith_should/
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