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注目記事(2007/8/20)

Opinions:
 
「安倍自民党か小沢民主党か:エコノミストの視点」
 原田泰 (大和総研チーフエコノミスト)
  
  安倍首相の支持率が、わずか9ヶ月で70%台から20%台に急落するとは誰も予想できなかっただろう。一般には自民党と首相の歴史的敗北は、年金、政治とカネ、閣僚の失言が主な原因といわれているが、有権者の心理や行動がほんのわずかなことで大きくスイングすることが決定的に重要だ。
  過去において日本の政治は、自民党と社会党の対立であり、自民は日米同盟と資本主義を擁護し、社会はそれに反対していた。したがって、自民党を真剣に支持し、社会党に強く反対していた人々が数多くいたのだろう。閣僚の失言などは、今日ほど重要な問題にならなかった。ところが今日のように、与党も野党も日米同盟と資本主義を守るとすれば、有権者がどちらを選んでもたいした違いはない。実際に今回の参院選で、民主党の小沢党首がむしろ古い自民党の代表のようで、違いがないと批判されたが、違いのないことこそが決定的に重要だった。違いがないからこそ、ほんのちょっとしたことで投票行動が予想以上に大きくスイングする結果となった。
  安倍首相の力が弱まることで、改革が逆行し、経済が混迷するという見方があるが、改革の逆行はすでに郵政造反派議員の復党から始まっていた。それ以外にも改革逆行の動きは見えており、今回の安倍自民党の敗北は大きな違いをもたらさないだろう。他方、小沢民主党は「ばら撒き路線」といわれているが、消費税を上げない限り、ばら撒ける金がないので、たいしたばら撒きになりようがない。言葉だけの改革路線と金のないばら撒き路線では、たいした違いにはならない。
  違いがあるとすれば、民主党が、おそらく、人々への直接ばら撒き政策を考えているように見えることだ。自民党がこれまで集票マシーンにしてきた建設会社、農協、地方自治体、中小企業団体、福祉団体などに金を配るのではないかもしれない。同じばら撒くなら人々に直接撒き、その効果を、マスコミを使ってアピールしたほうが、多様で複雑な政治的組織に補助金を配るよりはコストが安く、今日ではより効果的だろう。人々に直接金を配るのは欧州の左派の路線ということになるので、これを批判する人がいるかもしれない。しかし、日本と欧州を比べると、生産性は欧州の方が高い。米国に生産性はかなわないにしても、欧州方式を採用しても悪いことはないだろう。
英語の原文: "Whether Mr. Abe or Mr. Ozawa: An Economist View"
http://www.glocom.org/opinions/essays/20070820_harada_whether/
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