GLOCOM Platform
debates Media Reviews Tech Reviews Special Topics Books & Journals
Newsletters
(Japanese)
Summary Page
(Japanese)
Search with Google
注目記事(2007/8/27)

Opinions:
 
「日本のNPO・NGOの課題と展望」
 小林寛三 (国際大学GLOCOM客員研究員、ITコーディネータ協会事務局)
  
  日本におけるNPO・NGO(非営利・非政府組織)のボランティア活動は戦後を通じて増加してきたが、高度成長期までは人々の関心が私的な経済活動にあったこともあり、限られた人々によるローカルな活動にとどまっていた。それが1990年代に全国的な活動として広がったのは、「失われた10年」における長期の経済停滞と高い失業率の結果であるとともに、1995年に起こった阪神大震災の結果としてボランティア活動に対する一般国民の認識が高まったためである。また90年代中ごろからインターネットの商用利用が一般化したことも、ITでボランティア活動についての情報交換を行う若年層の興味を広く高めることに貢献したといえる。
  その後NPO・NGO活動は、国内的にも国際的にも日本の将来にとって決定的に重要な役割を果たし得ることが広く認識されるようになった。その第1の要因は、少子高齢化とともに団塊世代の大量退職の時代を迎えて、多くの人が自分たちの地域や社会を維持していくために必要なボランティア活動、例えば老人介護の必要性に目覚めてきたことである。またその傾向が、一般の支持を受けている財政改革によって促進されている。さらに、このところ日本の国際的貢献への期待が海外で高まっているのに対して、日本政府のODAの改革と見直しの動きを受けて、日本発NGOの国際的活動が増加しつつあることも重要なポイントである。
  ここで、日本のNPO・NGO活動の評価を行うならば、まず「長所」としては、色々な社会活動で経験を積んだ多くの熱心なボランティアが、組織運営をつかさどるノウハウを持って活動を進めている点が指摘できよう。しかしその反面、「弱点」としては、公的な資金も私的な募金も十分でないため財政的基盤が弱く、また分野の壁を越えて横断的に協力することが不得意で、さらに社会的な宣伝や認知レベルが低迷していることも問題である。
  今後の活動の「プラス要因」としては、グローバルな問題を共通項としてボランティアの個人間、組織間のネットワークを作ってより強力な活動を展開するチャンスが開けてきたことと、そのために必要な経営上および技術上のスキルを持つ団塊世代が退職してボランティア活動に参加する見込みがあることが指摘される。しかしながら「マイナス要因」としては、豊かな生活に慣れ切って、今だけに生きて将来を考えない安易で自己中心的なライフスタイルが、若年層を中心に日本で広く見られることは、ボランティア活動にとって深刻な課題である。また日本に限らず、政治的無関心が最大の敵であることはいうまでもない。
  これらのマイナス面を克服し、プラス面を生かすために、日本のNPO・NGOは色々なスキルを磨くとともに、特に公的な資金と私的な募金を集めるノウハウと能力を高めることが必要である。また国内問題でも国際問題でもNPO・NGO活動の目的を十分達成するために、国内外を問わず私的組織および政府組織と協力できる体制を確立することも重要であろう。ある意味で日本の将来は、今後政府の役割をかなり肩代わりすることになるNPO・NGO活動の成否に大きく左右されるといえる。したがって、すでに様々なスキルやノウハウを持つ団塊世代の退職者が、これまでのビジネスライフにおいて企業に貢献してきたように、今後は自分たちのセカンドライフにおいてボランティアのメンバーとしてNPO・NGO活動に積極的に参加して、自分自身のためと同時に日本の将来のために貢献することが強く望まれるのである。

英語の原文: "Challenges and Prospects for NPO/NGO Activities in Japan"
http://www.glocom.org/opinions/essays/
20070827_kobayashi_challenge/
. Top
TOP BACK HOME
Copyright © Japanese Institute of Global Communications